昨シーズン、Jリーグと天皇杯を制し、他クラブを圧倒する「19」のタイトルを獲得した鹿島アントラーズ。クラブOBである石井正忠監督は4-4-2のシステムから日々のトレーニングまで伝統を重んじ、「強い鹿島」を復活させた。就任して1年半で、3つのタイトルを手にした彼が思う鹿島アントラーズの組織力とは――。

――クラブハウスのロッカーの入り口には、ジーコの教えをつづった『「献身」「尊重」「誠実」=ESPIRITO(ポルトガル語で「精神」の意味)』が掲げられています。石井監督はジーコからどのような影響を受けてきましたか?

「個人的には勝負に対する執着心が、ジーコイズムの根本にあると思っています。練習から一つひとつの勝負にこだわり、基本的なことを突き詰めてやる。たとえばプレッシング一つとっても、パス一つとってもプレーの質にとことんこだわるということですね」

――ジーコのプレーから学んだ、と。

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「あの人は難しいプレーをやりません。基本的なことを判断良く、正確にやる。僕はそう学び取りました。先のCWC(クラブワールドカップ)でもレアルのモドリッチを見てもそうですよね。シンプルなプレーを心掛けつつ、判断がいい。凄く動く選手だし、技術もしっかりある。本当に素晴らしい選手だと感じましたね」

影響を受けた監督を一人挙げるなら……

――石井監督は02年からフィジカルコーチ、アシスタントコーチとしてブラジル人監督のもと働いてきました。影響を受けた監督を一人挙げるとすれば。

「オズワルド(・オリヴェイラ=07年から史上初の3連覇を達成)でしょうね。彼は選手にああしろ、こうしろとはあまり細かくは言わなかった。選手の自主性を引き出そうとする考え方は、僕とかなり近いんじゃないかなと思います。選手だけじゃなく、コーチ、スタッフに対しても同じような姿勢でしたし、僕もその一人として凄くやり甲斐を感じながらやらせてもらっていましたから」

――オリヴェイラは選手のモチベーションを高めるために、選手には内緒にして家族のメッセージつきビデオをミーティングで流したりしていましたよね。

「僕もそういう映像を一緒になってつくっていました。オズワルドも『何かいいアイデアはないか』って、常に選手のモチベーションを高めることを考えていた人でした」

――現在のコ―チは大岩剛、柳沢敦、羽田憲治、古川昌明と全員クラブOBですね。

「コーチのみんなにはそれぞれのキャラクターを出していってもらって、やり甲斐を感じてやってもらえればいいかなって思いますね」