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大宮エリー「映像・エッセイ・舞台…すべてが絵に集約できた」多才な彼女はなぜ絵を描き始めたのか

アートな土曜日 

2019/06/01
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絵でしか掬い上げられない"湧き上がる何か"

 ずっとやりたかった「たったひとつのこと」とは、どんなものを指しているのだろう。

「私の絵を見て泣いてくれる人がいる。何かを感じとってくれたのかもしれない」と語ってくれた 

「日常にあふれている小さい奇跡みたいなこととか、自分のなかから湧き上がる何か。そういうものを表現し伝えて、みんなで共有できたらやっぱりうれしいんですよ。小さい奇跡や湧き上がる何かというのは、言葉にならないものだったりすることも多くて、絵はそれをうまくすくい取れそうなのがいいんですよね。いろんな場所へ足を運んで、そこで見つけたものを絵に描くこと、しばらくはこれが続いていくんじゃないかな」

 そう本人が言う通り、今展にも日本のさまざまな土地を訪れ描かれた絵が並んだ。入口付近の展示空間には、瀬戸内の穏やかな海を描いた一対の作品や、彫刻家イサム・ノグチに触発された絵画シリーズが。奥の空間には、抽象画と見紛うような岡山のこんもりとした山の絵、宮城県塩釜で手がけた花の絵など。

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 明るい色とかたちに包まれ佇んでいると、朗らかさと少しの激情、もの哀しさや周りのすべてをもっと大切に思いたい気分……。自分の内側にしまってあったいろんな感情がいちどきに引き出されて、すこし戸惑ってしまう。

 でもそれはもちろん嫌な気分じゃない。訪れる前よりも、心身がよく整理されたような心持ちで、会場をあとにすることができるのだった。

写真=原田達夫/文藝春秋
all images: ©Ellie Omiya

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