「ボブル内海」が世界最速でメットライフドームに参上!
迎えた5月26日、内海哲也さんコラボ前半戦最大のイベントがやってきました。3月4日に球団から発表され、3000枚限定で発売された「内海哲也投手ボブルヘッド付きチケット」。野球グッズのなかでも人気が高い「ボブルヘッド人形」の内海さんバージョンが配布される日が、この5月26日だったのです。巨人時代につけていた背番号26にちなんだ配布日は、まさに内海デーといった様相。
この2日前には西武球団・小野投手コーチによる「(内海さんの復帰は)6月中はない」というコメントも報じられたなかでの内海デーは独特な高揚感に満ちていました。「うへー! 投げるより先にボブった!」「これ確実に世界最速記録でしょ!」「登板ゼロ試合を抜くにはもはや他球団の選手のボブルヘッドを勝手に出すしかない!」とコラボマニアも大盛り上がりです!
西武移籍後の背番号27(※西武では伊東勤さん以降キャッチャーがつけている番号だけどお互いにこだわりはナシ)を刻されたボックスに入ったボブル内海はズッシリとした重量感。投球中の一瞬を切り取ったポーズは、やや頭部が台座より外にはみ出す状態となっており、今にも倒れそうな躍動感が表現されています。球場付近にセブンイレブンはないけれど(※一番近い所沢下山口店まで1.8キロ)、セブン銀行のロゴを入れたプレートを台座に配するなど遊び心もタップリ。
グローブの色や利き腕、背番号など内海さんの特徴が丁寧に再現された造形は、どの角度から見ても内海さんとわかります。内海さんのほっこり家族愛エピソードである、「帽子のつばに家族のイニシャルS・E・O・S・Kが書いてある」については残念ながら再現されていませんでしたが、間違って文字が抜けて「S・O・S」になる事態を避けるためにはやむを得ない処置でしょう。
ボブル内海と応援歌を歌ったり、ボブル内海とビールを飲んだりしながら過ごした充実の時間。試合は4点リードから中継ぎが次々に炎上して逆転負けとなりましたが、とても楽しい内海デーとなりました。しかも当日は試合後にグラウンドに降りられるイベントがありましたので、ボブル内海もメットライフドームのグラウンドに降りてみました。内海さん本人が参上できなくてもボブル内海がいるぞ、そんな前向きな気持ちで!
ボブルは立ち上がるさ、何度でも。手で起こせば……
しかし、ボブル内海はメットライフドームにちゃんと降り立つことはできませんでした。人工芝が柔らかくたわむため、台座の下にコイン2枚分くらいの厚みをかませてやらないと、土台からハミ出した頭の重みで倒れてしまうのです。倒れるときは前のめり、そんな内海さんの生き様を示すかのように、ボブルは何度立たせようとしても倒れました。そして、改めて冷静に見たら似ても似つかない代物……。
やはり、本物の内海さんに参上してもらわなくては、満足してこのコラボを終えることはできません。世の中には「何試合かだけ出るんやったら、まったく出んほうが、ええかなあと。中途半端に出てね、1勝くらいして、巨・西通算って言われても嫌やし、だからそんなんやったら、まったく出んでも」という考え方もあるでしょう。オール巨人で通算成績を染め上げたほうがスッキリするという意見はわかります。1試合でも投げたら、あと4つに迫った1500奪三振を達成しちゃうなぁ、という計算も働くでしょう。
でも、せっかくのこの出会い、1勝でも、1ホールドでも、1セーブでも、埼玉西武ライオンズでの足跡を残して内海さんとの時間を終えたい。そして、ボブル内海を「ウチの内海」と思って末永く愛でていきたい。内海さんが1回も投げないままのほうが「珍品」としての価値は上がるかもしれませんが、メルカリ実勢価格2700円が3000円に上昇することよりも、内海さんの1球が見たい。「ホント、悪いことしたなぁ」と思いながら見守る西武ファンの申し訳なさをも包み込み、どんな環境でも妥協なく野球に取り組む内海さんのひたむきさ。そのコラボレーションの記憶を僕は子々孫々に語り継いでいきたいのです。2019年を生きた埼玉西武ライオンズファンのひとりとして……!
<2050年頃の我が家での野球談議>
爺:「昔、この内海さんは西武にいたんじゃよ……」
孫:「ウッソだー! じいちゃんまたウソついてる!」
孫:「内海監督が西武にいたわけないだろ!」
孫:「巨人の監督は生え抜きしかできないんだぞ!」
孫:「こないだもイチローがオリックスにいたとか言ってたし!」
孫:「イチローはメジャーのレジェンドだぞ!」
孫:「イチローがオリックスにいたわけないだろ!」
爺:「お前らが知らないのも無理はない……」
爺:「あれから随分経つからのぉ……」
爺:「あの年、内海さんはほかの選手の移籍で押し出されてな……」
爺:「別に来たくもないのに西武に来たんじゃ……」
爺:「ワシも、『え!? 炭谷で内海を!?』と驚いたものじゃ……」
爺:「案の定、炭谷はさして使われんかったがの……」
爺:「ワシら的には『今年の炭谷は打撃絶好調』と思ってたんじゃが……」
爺:「巨人さんはご不満じゃったらしい……」
爺:「小林とどっこいどっこいじゃねぇかと……」
爺:「ワシらは何度もそう言って事前に止めたんじゃが……」
孫:「誰の話?」
孫:「知らない選手ばっかり」
爺:「しかし、内海さんも怪我をしてしまってな……」
爺:「長い間、試合に出られなかったんじゃ……」
爺:「それでも内海さんは腐らず、練習に取り組んでのぉ……」
爺:「シーズン終盤にようやく復帰すると……」
爺:「ソフトバンク……今のファーウェイ相手に7回無失点の投球を見せてくれたんじゃ……」
爺:「試合自体はマーティンの炎上で逆転負けしたが……」
爺:「内海さんはやっぱり巨人の大スターだったのじゃ……」
爺:「結局、内海さんはFAで巨人に戻り」
爺:「西武での登板はそれが最初で最後じゃったが」
爺:「ワシはあの時の感動を忘れんじゃろう」
爺:「有名な選手が巨人から西武に来た、あの感動を」
爺:「どれ、アレを見せてやろう」
爺:「その年、ワシがもらったボブル内海じゃ」
爺:「もらい手が少なかった貴重な品じゃ、大事に扱うんじゃぞ」
孫:「すげー! 内海監督のボブルヘッドだ!」
孫:「うん、UTSUMIって書いてある! 間違いない!」
孫:「頭揺らそうぜ!」
爺:「あー、イカン! 揺らしてはイカン!」
倒れたらまた起き上がればいい!
できれば最初から倒れないほうがいいけど!
ガンバレ内海さん、立ち上がれボブル内海!
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