メットライフドームの「名物」である外野芝生席は昨年まで自由席だったが、今年から指定化された。

「歌って跳んで民族大移動しながら応援したい」というファンの人気が高まり、場所取りが競争激化した一方、少しでも多くのファンにリーズナブルな値段の席で見てもらいたいという球団側の意向など、理由は様々あるだろう。

 指定化された芝生席の大きさは、横70センチ×縦100センチ。これがどれくらいの広さなのか、「バットケースを縦に置いてちょうどぴったりくらい」、あるいは「ヒロ斎藤がぎりぎりセントーンをかませるくらい」と聞けばわかるだろうか(ともにライオンズファンのブログ「子連れ野球に関する幾つかの考察」より引用)。

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 球団の決定にファンは賛否両論だが、一つ言えるのは、指定化のおかげでレフトスタンドに新たな「名物」が生まれたことだ。

メットライフドームの新名物 ミラクルゲームニキ

 ミラクルゲームニキ──。

 外崎修汰が打席に入る際の登場曲、TUBEの「Miracle Game」に合わせて激しく踊ることから、コアなライオンズファンの間でそう呼ばれ始めた。

「ちゃんと面と向かって呼ばれたことはないけど、ネット上でそう呼ばれているという噂だけは聞いたことがあります」

 そう語るのは、“ミラクルゲームニキ”こと井本剛寛さんだ。

ミラクルゲームニキ ©中島大輔

「風の噂で聞く限り、『おじさん』という声は重々承知しているけど、1985年生まれの33歳です。福岡出身で、ライオンズファン歴は20年くらいですね」

 1997年のオールスターでの松井稼頭央の4盗塁や、西口文也のピッチングでライオンズが気になり始め、高校3年時の甲子園でよく見ていた松坂大輔の入団とともに福岡ドーム(当時)に通い始めた。大学入学で上京し、気づけば西武ドーム(当時)に通い詰めるようになっていく。

 そんな井本さんが“ミラクルゲームニキ”として脚光を浴びたのが、今年4月14日のオリックス戦だった。

「サードユニフォームの配布日でチケットを簡単に取れなくて、自分の席が外野指定ベンチと外野指定芝生エリアの境目の辺りで、たまたま前に何も遮るものがなくてテレビカメラが見つけちゃったという……」

 外崎が打席に入る際、ノリノリで踊る井本さんの姿を球団のテレビカメラが捉え、電光掲示板にデカデカと映し出された。全身を使った独創的ダンスに球場やテレビ越しのファンが度肝を抜かれたばかりでなく、その衝撃は井本さんの勤務先にまで知れ渡った。

「どこからか社内に伝わり、動画が拡散されていたんです。これはやばいなと(苦笑)“あまり触れないでほしいオーラ”を出してやり過ごしました」

 基本的にマジメだが、弾けるときは弾けるという井本さん。実は、外崎が「Miracle Game」を登場曲にした2年前から踊っていた。

「(いつも座っていた席が)後ろだから気づかれないんです。仲間内で『やっている』くらいのレベルで、知る人ぞ知るみたいな感じでした」

 それが今年4月の試合で電光掲示板に映し出され、ライオンズファンの間で“ミラクルゲームニキ”として有名に。ツイッターで検索すると、「萩山で見た」という目撃情報まであるほどだ。

「たぶん萩山には100%通らないので、完全にニセモノですね。というか単純に身なりオッサンですから、オッサンが見えたら『いた!』と言いたくなるような感じなんじゃないですか」