「数字があれば納得することができる」
理詰めで野球に取り組みたい加藤にとって、2015年に大リーグで導入されたデータシステム「スタットキャスト」のマイナーへの普及は大きかった。スタットキャストは高性能カメラとレーダーを使った情報サービスで、例えば打球角度や打球の初速などこれまで感覚で語られてきたことを、数字で確認することができる。
「バッティングは運に左右される。ヒットが出ていなくても、球は強く打てているという数字があれば納得することができる」と話し、オフシーズンの打撃改造でも数字を参考にした。「インフォメーションがあるなら、できるだけ使うのはいいことだと思う」とシステムを活用しながら「データアナリストの話だけだと、ちょっと難しい。同じことを言っていても、打撃コーチの『通訳』があるともっとやりやすくなる」とデータとの距離の取り方も巧みだ。
今季は3Aで内野の全4ポジションを守っており、昨季は2Aで外野も守った。松井氏は「初めての3Aでいいものを見せた。どこでも守れるから使い勝手はいい。あとはとにかく打つこと」と打撃でのさらなる進歩を期待する。
「リーグのレベルに関係なく結果を出すだけ」
5月は月間打率.203と苦しみ、6月を迎えた。加藤は「バッティングは波があるので、絶対にまた打てる時が来る。それを信じてやっている。こういうことには慣れている。大事なのは準備をして試合に臨むこと」と語る。
2015年に極度の不振に陥り、1Aから最下部のルーキーリーグに送られたことがあった。「苦しんだ時があるから、今がある。その経験がなかったら、松井さんの指導を受けても、きっかけにできなかったかもしれない。すべての経験があって今があるという感じです」と信じるのだという。
マイナー契約にもフリーエージェント(FA)があり、今季をマイナーで終えると、シーズン後自動的にFAとなる。現時点で来季の所属は予測できない。そしてそれはチャンスでもある。
「本当に結果を出すだけ。けが人がメジャーに戻ったら(玉突き降格で)2Aに落ちる可能性だってある。でもリーグのレベルに関係なく結果を出すだけです。そうすればヤンキースでなくても、どこかで40人枠に入るということは分かっている」
ヤンキースタジアムから北西に約200キロ、ペンシルベニア州の小さな町にある球場で意気込みを口にした。大リーグを目指し、18歳の時から戦い続けてきた。険しい道ではあるが、決して届かない距離ではない。