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専門家からは「英語は質も大切」との指摘も

 もちろん、中にはうまいなと感じるアナウンスも増えている。停車駅やドア方向の情報に加えて、忘れ物がないよう確認を呼びかけるリマインドや、ホームとの隙間が空いている場所での足下注意の呼びかけ、外国人向けのジャパン・レール・パスでのぞみ号には乗車できない――といった多彩な英語表現をしっかり説明できる乗務員のアナウンスを聞くと頼もしく感じる。だが、そこまでできる人はまだ多くないようだ。

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 英語の専門家からは「英語は質も大切」との指摘も上がる。実用英語のラジオ講座を長く担当しているある講師は、「突発事故が起こり、例えば、『皆様、3両目の車両に日本刀を持った男がいます。現在けが人がいるようですが、警察官が対応しています。発砲するかもしれませんので、4両目以降にお座りの方はできれば後方に移動を……』といったような状況に応じたアナウンスができるかどうか。乗り合わせた外国人にも何らかのアクションを要請するような事態が発生した際に、しっかりした英語でないと混乱が増してしまう」と話す。

 それは逆の立場に立って考えてみればわかりやすい。海外に行って、何かトラブルが起きた時、日本語らしき言葉で何か説明されているにもかかわらず、何を言っているのかわからない状態では、逆に不安に襲われてしまうだろう。

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グローバル化が末端レベルまで浸透しつつある

 英語アナウンスの真価が問われるのは、やはり前述のような予期せぬトラブルなどが起きた時だろう。もちろん、そうした事態はないに越したことはないが、起きる可能性は常にある。乗務員の持つスマホのアプリに想定したパターンはいくつか用意されているものの、緊急時に的確な英語で対応できるように、多くのケースを意識した技量向上も今後の課題になるだろう。

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 とはいえ、公共交通機関などの現場でこうした英語サービスの動きが広がってきているのは歓迎すべきことだ。徐々にグローバル化が末端レベルまで広範に浸透しつつある動きともいえるだろう。JR西日本でも同様の英語アナウンスを今年1月から始めており、山陽新幹線でもサービス向上に取り組んでいる。

 新幹線に限らず様々な業種でこうした動きが広がれば、日本は外国人客に優しく、周遊しやすい一段と魅力ある国になるだろう。多くの外国人が世界から日本に集結する来年の東京オリンピック・パラリンピックまであと400日を切り、いよいよ目前に迫っている。