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東海道新幹線の英語アナウンスは逆効果? 問われる「英語の質」

グローバル化に向けて歓迎すべき流れだが……

2019/07/01
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「We are stopping at Shin-Osaka station. The doors on the right side will open」

 最近、東海道新幹線でちょっとこなれない英語の車内アナウンスが流れているのを耳にした方も多いだろう。日本語でのアナウンスの後に続く、乗務員による肉声でのアナウンスだ。

 このアナウンス、訪日外国人客の増加を受けてJR東海がサービス向上のために昨年12月から行っている“新サービス”だ。それまでは事前に録音された英語のネイティブ・スピーカーによるアナウンスを流すだけだったが、外国人旅客向けに肉声の案内も加えて対応を強化した。

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早口過ぎて、ドアが開く方向が耳に入ってこない

 車内で必ず案内しているのは、冒頭に紹介した次の停車駅と、開くドアの方向の2つだ。旅客にとって次の停車駅名は必須であるし、開くドアの方向も多くの荷物を持つ旅行客のスムーズな乗降には役立つ情報である。

 肉声による英語アナウンスについて、関係者は「車掌など乗務員には当初、やや戸惑いもあったようだ」と話す。だが、外国人旅客の増加を受けて、他の社員が駅構内や切符売り場など様々な場面で英語対応を迫られるなか、車内でも対応が求められることに対するニーズは自然に受け入れられていったという。担当者は職場の「英語委員会」や「英語力向上委員会」と称する組織で、日々発音などの練習を重ねている。

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 筆者も英語アナウンスの始まった頃の様子を覚えている。当初は原稿の「棒読み感」が否めず、不慣れな印象も強かった。「慣れないから手元の文章を早く読んでしまいたい」という心理が働くのか、早口過ぎて、ドアが開く方向が右なのか左なのか基本的な情報が耳に入ってこない時もあった。さらに、別のタイミングでは、ボソボソという声で発せられた言葉が英語なのかどうかもはっきりせず、メッセージが全体的に何を言っているのかわからない時もあった。

 それでも、導入から半年以上が経過したいま、練習の成果が出てきたのか、だんだん慣れてきた様子も見て取れる。