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羽生選手らしい言葉って何だろう

【ショートプログラムの後】

――後半での4回転トウループが決まりませんでしたね。

羽生 まあ、なんですかね、その……。“後半”という固定概念があるのかもしれません。

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――ミスはメンタルから来るものか、体力によるものか、どう感じていますか?

羽生 どちらも大きいと思います。でも言ってることが矛盾するかもしれませんが、どちらも影響は少ないかもしれません。実際は大きくないのに、自分の中の思い込みで、大きく感じているかも知れません。

――後半という概念を考え過ぎなのか、それとも考え足りないのでしょうか?

羽生 うーん。考えなくてはいけないことを、絞り切れてないのかな……と思います。

 

【フリープログラムの後】

――ショートとフリーでは『後半の4回転』の課題は違いますか?

羽生 違うと思います。ショートでの疲れ、フリーでの疲れは違いますし、プログラムも違う。でもショートでの課題とフリーで注意する課題とを、どんどん沢山集めて、共通しているものを見つけられれば良いと思います。

――そもそも、本当に後半の4回転には別の技術が必要なのでしょうか?

羽生 気持ちのフレッシュさがないというのも、ある程度あるかなと思います。後半はこんなもんなんだ、と割り切るしかないな、と思っています。

 

©Mari Amita

 声は小さく、言葉はところどころ詰まり気味。「羽生選手らしくないな」と思うと同時に、「じゃあ、羽生選手らしい言葉って何だろう。どういう言葉なら、勝利を予感させてくれるのだろう」と考えました。そしてノートをめくったのです。

 私自身による彼への取材ノートは07年から始まり、個別インタビューは08年から続けて来ました。その取材録のなかから、彼の“真の心”と“頭脳の葛藤”を抽出したものが本書です。

 成功者からノウハウを学ぶ本ではありません。成功を前提とした言葉は、何一つないからです。07年から取材してきた、当時のリアルな言葉をそのまま綴りました。王者といえども、未来は分かりませんから。

 皆さんの前で見せている闘志に燃えてスカッとカッコイイ羽生結弦というよりは、モヤモヤ悩みグルグル考える羽生結弦。そこに新たな魅力とドラマ、そして見えない未来に向かって一歩を踏み出すための“知恵”を感じとっていただければと思います。

野口美惠(のぐち・よしえ)

野口美惠

毎日新聞記者を経て、スポーツライターに。自身のフィギュアスケートの経験と審判資格、現場取材を通して、技術的な側面と選手の肉声を合わせた詳細な記事を執筆する。著書に『伊藤みどり トリプルアクセルの先へ』、『ギフト フィギュアスケーターが教えてくれたもの』、『チーム・ブライアン』(翻訳・構成)がある。

 

羽生結弦 王者のメソッド (Sports graphic Number books)

野口 美惠(著)

文藝春秋
2016年3月25日 発売

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