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2019/07/05

「叩いてもいい相手」をただ大勢でボコボコにしている

 冒頭で申し上げたように、私が最近の炎上騒ぎにおいて「異様さ」を感じていたのは、おそらくネット上で「叩いてもいい」と見なされた相手を見つけて、ただ大勢でリンチしているだけのように見えたからかもしれません。

 モラハラ彼氏の件も、本当に彼女を心配して、あるいは彼氏に怒りを感じている人はほとんどいなくて、「あなたのためを思って言ってるんですよ」という大義名分のもとに、みんなが寄ってたかってサンドバッグをボコボコにしているようにしか見えないのです。

©iStock.com

「叩かれる側にも原因があるから」と思う人もいるかもしれませんし、確かにそういうケースも少なくありません。だからと言って、すでに大勢から殴られて息も絶え絶えになった誰かに対して、さらにダメージを負わせたり、再起不能になるまで追い込むような仕打ちをしたりすることが許されるわけではないでしょう。

 いきすぎた「正義」は「暴力」になりうる。

 まさかTwitterがきっかけになるとは考えてもみませんでしたが、このところの炎上騒ぎは、私にとってこの“戒め”を再認識する機会となったように思います。

完全匿名でも実名制でもないカオス空間

 某巨大ネット掲示板などにおいては、いわゆる「バイトテロ」行為をTwitterに投稿した人を「バカッター」と呼び、掲示板じゅうの英知を集めて投稿者を特定する「祭り」で盛り上がる文化があります。この祭りを是とするか非とするかはさておき、本来SNSであるTwitterというプラットフォームで、匿名掲示板によく似た大規模の炎上が起こることは非常に興味深いことだな、と思います。

 完全匿名制の掲示板でもなければ、Facebookほどの実名制でもない。Twitterは、ちょうど真ん中あたりにあって、自由であるゆえユーザーの性質、目的や使い方にも多様性があるのかもしれません。アカウントを非公開にして、面識のある知り合いだけに向けてつぶやきをする人、よりたくさんの人に自分を知ってもらうためのツールとして利用する人、匿名性の高いアカウントで趣味の仲間を見つけて交流を楽しむ人、誰かを攻撃するためのアカウントを作る人。

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 そういった意味ではTwitterはさまざまな人種のるつぼであるため、価値観もそれぞれで、しかも簡単にコミュニケーションが取れてしまうツールです。だからこそ衝突も多ければ、晒し行為や、一大ムーブメントである「大炎上」も起きやすいのではないでしょうか。「FF外」の第三者からのアドバイスや指摘が「親切」だと思う人もいれば、ただの「クソリプ」に感じる人もいるわけです。

 私はTwitterの絶妙なバランスが作り出す「カオス感」がたまらなく好きなのですが、Twitterを単なる「コミュニケーションツール」として使っている人たちにとっては、だんだんと息苦しい世界になりつつあるのではないか、と危惧しています。

 いずれにせよ、こうしたネット環境に身を置くからには、「正義」という名の棍棒を振りかざして突然誰かを殴ったりするのではなく、「画面の向こうにはひとりの人間がいる」ということを意識したいところです。

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