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G20で「エレベーターつけたのは大きなミス」発言の安倍首相、その他の失点とは

2019/07/05
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 大阪市で開かれていた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が6月29日に閉幕した。米中通商問題、デジタル貿易のルールづくり、海洋プラスチックごみの問題などが主要なテーマとなったが、なぜか記憶に残ったのは安倍晋三首相のジョークへの批判と日米安保条約をめぐるドナルド・トランプ米大統領のいくつもの発言だった。G20での安倍首相とトランプ米大統領の発言を追ってみた。

安倍晋三 首相
「しかし、一つだけ大きなミスを犯してしまった。エレベーターまで付けてしまった」

時事ドットコムニュース 7月1日

 28日に開かれたG20サミットの夕食会で挨拶に立った安倍首相は、大阪城について「天守閣は今から約90年前に16世紀のものが忠実に復元された」と紹介。そのときに「しかし、一つだけ大きなミスを犯してしまった。エレベーターまで付けてしまった」と語った。ジョークだったのだろうが、映像を見る限り大きな笑いは起こっていない。

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安倍晋三首相 ©Getty Images

 これに対して、生まれつき両手足がない障害を持つ作家の乙武洋匡さんがツイッターに「とても悲しい気持ちになる」と書き込むなど、批判の声が広がった。共産党の小池晃書記局長は記者会見で「多様な人々の人権を一顧だにしない。こういう人が首相であることが最も大きなミスだ」と切り捨てた。

文化庁による史跡整備方針と真反対

 城郭考古学の千田嘉博奈良大教授は「あまりにひどい」と憤る。文化庁による史跡整備方針は、史跡の本質的価値を保ちながら、車椅子の利用者、高齢者、子連れの人など、すべての人が平等に体感できるように整備を進めてようとしている。世界遺産などでも、できる限りバリアフリーを実現しようとしているという。

 安倍首相を擁護する声もある。名古屋城天守閣の木造復元を目指す名古屋市の河村たかし市長は「文化や伝統を大事にしようという趣旨でしょう」と理解を示した上で、「本物を皆に見て触れてもらうのが本当のバリアフリー。エレベーターを作るのは冷たい考え方だ」と持論を述べた(毎日新聞 7月1日)。

大阪城 ©文藝春秋

安倍晋三 首相
「障害者やお年寄りに不自由があってもしょうがないと聞こえるかのような発言はちょっと遺憾だった」

時事ドットコムニュース 7月2日

 こちらは安倍首相が側近の萩生田光一幹事長代行に語ったという釈明。安倍首相ではなく萩生田氏が記者団に明らかにした。「遺憾」と言えばセーフのお家芸。「バリアフリーの社会に異論を唱えるような発言ではない」とも語ったというが、そんなの当たり前である。