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義偉 官房長官
「今回の日米首脳会談で、この安保条約の見直しだとか、あるいは片務的であるとか、そうしたやりとりも含めて、日米安保に関することは、まったくなかったということだ」

FNN PRIME 6月30日

 安倍首相や菅官房長官らは、トランプ氏の日米安保条約の見直し発言を一貫して打ち消し続けてきた。日米同盟に打撃を与えると考えられたからだ。G20サミットの直前、「トランプ大統領は日米安保条約が米国にとって不公平だと考えている」と報じられた際は「報道にあるような日米安保見直しといった話は全くない」と否定した(ブルームバーグ 6月25日)。

 6月28日に行われた日米首脳会談でも日米安保条約についてのやり取りが注目されたが、菅氏は「まったくなかった」と完全否定。また、これまでの安倍首相とトランプ氏のやりとりの中でも「日米首脳の電話会談に必ず同席しているが、その中でも言及はなかった」と徹底的に否定してみせた。菅氏の発言は「過去6カ月間、安倍首相に伝えてきた」というトランプ氏の発言と真っ向から矛盾する。

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 トランプ氏に日米安保条約を破棄する考えはないとされるが、「不公平」だと考えているのは確かだろう。それを経済面での「ディール=取引」に活用しようという意図は明確だ。

ドナルド・トランプ米大統領(左)と安倍晋三首相(右)©JMPA

今後もいいように「ディール=取引」をされてしまう?

安倍晋三 首相
「トランプ米大統領は初めて会った時から、日米安全保障条約についていろいろ言っていた」

時事ドットコムニュース 7月3日

 ところが、トランプ氏が2016年11月の初会談時から日米安保体制への不満を漏らしていたことを安倍首相がわりとあっさり認めてしまった。「まったくなかった」なんてことはなかったのだ。

 安倍首相はトランプ氏に「反論」し続けてきたと主張したが、トランプ氏は6月29日の記者会見で「我々が(日本を)助けるのなら、日本も我々を助けるべきだ」という考えを安倍首相が理解しているという認識を示している。

 政府が表向きには日米同盟の盤石ぶりをアピールしつつ、裏側でトランプ氏の言い分を認めているのだとしたら、今後もいいように「ディール=取引」をされてしまうだろう。

安倍晋三首相 ©JMPA

 また、改憲議論につながっていく可能性もある。しんぶん赤旗は「『米国が攻撃されても日本はたたかわない』ことを問題視するトランプ氏の発言は、安倍晋三首相の主張と相通じるものです。首相が固執する憲法9条改定をはじめ『海外で戦争する国』づくりの危険な狙いを示しています」とトランプ氏の安保見直し発言を改憲とつなげて論じている(7月3日)。

 赤旗とはまったく主義主張が異なる産経新聞の社説(主張)でも、トランプ氏の安保見直し発言と改憲をつなげて論じているのが興味深い(7月4日)。トランプ氏はG20サミット終了後、さっさと北朝鮮へ行ってしまったが、参院選を控えて日米両国から今後どのような発言が出てくるのか注視していきたい。