「予定調和の日常からズレないとコトは起きない」
このとっさの嘘が鐘子には効果的だった。
「完璧でぴしっとした状態のままだと、恋って生まれないと思うんです。嘘をついたことで鐘子のなかに“気の乱れ”みたいなのが生じて、隙が生まれたことで恋が始まった。結局、予定調和の日常からズレないとコトは起きない。彼氏とうまくいかないと男友達に愚痴っているうちにその相手と……とかも、磁場が乱れるからこそ」
この作品は韓国のスマホマンガのプラットホームで企画が立ち上がり、2017年に日本で、2018年に韓国で連載がスタート。東村さんはKポップ好きで、ソウルに何度も行っており、愛情表現豊かな韓国男子のリアルをジョバンヒ(ドラマ版では帰国子女の日本人・伴野丈〈ばんの じょう〉と別設定になっている)に重ねた。
「韓国の男性と付き合ってる子たちに話を聞くと、彼らは靴紐がほどけたらすぐに結んでくれたり、スクランブル交差点の真ん中にいち早く走っていって“おいで”と女性を待ち構えて抱きしめたり、少女マンガみたいなことをふつうにするらしいんです。日本人男性とはマインドが全然違うんですよね。結婚すると亭主関白になることもあるみたいですが、恋人同士の時は愛情表現がとにかくドラマティック」
ジョバンヒが「あなたがきれいで可愛いからだよ」と自然に鐘子にいう言葉もファンタジーではなく、現実として描いているという。
「飛行機でイケメンと隣同士になって恋が始まるなんてありえない、と言う人もいますが、私の友人にはソウルの焼肉屋で隣同士になってカップルになった子もいますからね。現実に起こりそうなことを物語に落とし込んでいます。主人公のキャラクターを考えるときは、その人物の生まれ年をまず設定して、中学や高校のときに何が流行っていたか、何が好きだったのか、両親が今何歳なのかなど、国勢調査みたいなデータを集めていきます」