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「自由の女神が泣いている」世界で、引き分けについて語るということ

名言、珍言、問題発言で振り返る1週間

2017/02/06

ドナルド・トランプ 米大統領
「みんなこれが『入国禁止』なのかどうかを議論しているが、呼びたいように呼べばいい。悪意を持った悪者を国に入れないためだ」
NHK NEWS WEB 2月2日

 トランプ大統領が次々と繰り出す政策と暴言に世界中が翻弄された1週間だった。もはや「トランプは大統領になりたいだけで実際には何もしない」「実はクールなビジネスマン」などといった事前の楽観論は完全に消え去ったと言っていい。

 特に波紋を呼んだのが、すべての国の難民と中東やアフリカ7ヵ国の人の入国を禁止することを命じた大統領令だ。アメリカ国内の政治家をはじめ、各国の首脳、グローバル企業のトップなど、多種多様な人たちが反発する声明を発表しているが、トランプ大統領がひるむ様子はない。難民移送をめぐるオーストラリアのターンブル首相との電話会談では「豪州が爆弾テロリストを輸出しようとしている」「あまりに最悪の電話だ」と言い放った。

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チャック・シューマー 民主党上院議員
「自由の女神が泣いている。移民を歓迎する伝統が踏みにじられた」
時事ドットコムニュース 1月28日

 ニューヨークの自由の女神像は、世界中からアメリカへやってきた移民たちを港の入口で迎え続けた新天地における自由と民主主義の象徴。オルブライト元国務長官も「自由の女神像に但し書きはついていない。アメリカはあらゆる信条とバックグラウンドの人にオープンであり続けるべきだ」とツイッターで発言している(1月26日)。

カナダのジャスティン・トルドー首相 ©getty

ジャスティン・トルドー カナダ首相
「信仰に関係なく、迫害やテロ、戦争から逃れた人をカナダは歓迎する。多様性はわが国の強みだ」
時事通信 1月29日

各国首脳の中でも喝采を集めたのが、難民の受け入れを示したカナダのトルドー首相の声明だった。しかし、この直後、ケベック州のモスク(イスラム教礼拝所)で銃撃事件が発生。トルドー首相は国内のイスラム教徒に「私たちは皆さんの味方だ」と呼びかけた。

1月30日、グーグルのトップページに掲載されたフレッド・コレマツのイラスト

フレッド・コレマツ
「何かおかしいと感じたら、声を上げることを恐れてはいけない」
朝日新聞 1月31日

 コカ・コーラやスターバックス、フォードなどのグローバル企業のトップたちが入国禁止令を批判する中、グーグルは米国版のトップページに戦時中、大統領令による日系人の強制収容に反対し続けた日系2世のフレッド・コレマツのイラストを掲載した。グーグルはコレマツの言葉とともに、その生涯を紹介している。

1月29日 全豪オープンを制したロジャー・フェデラー ©getty

ロジャー・フェデラー
「テニスは厳しいスポーツで引き分けというものがない。しかし、もしも引き分けがあるなら、僕は今日喜んでラファと勝利を分け合うだろう」
THE TENNIS DAILY 1月30日

 スポーツの話題から。全豪オープンでフェデラーはラファエル・ナダルとの5セットの激戦を制し、18度目のグランドスラム・タイトルを獲得した。35歳のフェデラーは、故障による6ヵ月のブランクを経てからのカムバック。30歳のナダルも、左手首のケガからの復帰をかけていた試合だった。とても清々しい言葉。

三原董充
「子どもの安全わしらが守る」
NHK NEWS WEB 1月31日

 島根県益田市で登校中だった児童1人と付き添いの73歳の男性・三原董充さんが酒気帯び運転の軽トラックにはねられた。児童は軽いケガで済んだが、三原さんは翌朝死亡した。10年以上にわたって登校中の児童に付き添うボランティア活動を続けていた三原さんは、30年以上前、現場の近くで起きた交通事故で当時小学生だった娘を亡くしていた。

 事故現場には、三原さんら「豊川地区子供見守り隊」による「見つめる 見守る みんなの目で 子どもの安全 わしらが守る」という立て看板が設置されていた。事故直後、三原さんは児童に向かって「大丈夫か」と声をかけつづけていたという。

(文中敬称略)

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