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笑え、高橋! そこから何か変わるんじゃないか

 1軍登録された高橋は、最初のゲームにスタメンで出場してヒットが1本出た。「よかったじゃないか、高橋」そう思ったが、終盤のチャンスでは代打を送られた。1週間が過ぎ7打席で1安打。「野球の神様よ。高橋はここから5打席で1安打なのかもしれないけど、その1本を次の打席にしてくれないか。それで変わる気がする。どのくらいチャンスが残ってるか、よくわからないんだ」そう願っていた。

 しかし神様に「この先5打席で……」と願ったのは甘かった。高橋に次の打席はなかった。登録抹消となったのだ。1軍にいたのは1週間。「やっとです」と言って巡ってきたチャンスは1週間だった。美男でもない無愛想な男には、野球の神も無慈悲なように思えた。

 一体、高橋はどうすればいいのだろう。インタビューの「去年からずっと言ってるんですけど、やっぱり打つことしかないんで」という言葉が沁みる。確かにそうなのかもしれない。あの1週間の7打席でもっと打つしかなかったのかもしれない。

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 そうなのかもしれないが「笑え、高橋」そうも思うんだ。すべてを笑い飛ばしてしまうんだ。2軍で控えてろ、とでも言わんばかりの首脳陣を。ヒットが出てなくても余裕のスター選手を。ずっとチャンスをもらっている美男のライバルを。好印象のルーキーを上げろというファンを。そこから何か変わるんじゃないか。よくわからないかもしれない。でも、これがエールなんだ。笑え、高橋!

【追記】

 あとからわかったのだけど、高橋が1週間で1軍から抹消されたのは怪我の影響があった。1軍にあがった最初のゲームで肩を怪我をしたらしいのだ。外から観ているだけの私にはわからなかった。首脳陣を恨んだのは間違いで、恨むなら野球の神の方だった。外から応援してるだけの私にはわかってないことが多い。

 そして高橋は1軍に戻ってきた。復活して2軍で好調な打撃をみせ、もう一度戻ってきた。その日ナイターが始まったころ、私は外出先での仕事を終えカフェで仕事をしながら、スマホにスポナビの一球速報を出していた。高橋は1番スタメンに抜擢されている。ふとスマホを見るとホームランが飛び出していた。打ったのは誰だ? 高橋だ。やったじゃないか! 急いでSNSを見るとプロ入り1号を祝福するコメントが並んでいた。

 ホームランのあと、高橋がどんな表情だったのか気になる。もしかすると高橋のヒーローインタビューかもしれないな。そんなこと思いながらカフェにいた。まぁ、そのあと投手陣がつかまってしまい、高橋のヒーローインタビューはなかったのだけど。帰るころにはカープは負けていた。負けた日のプロ野球ニュースは観ないのだけど、今日は観なきゃいけないな。高橋はチームメイトに祝福されながらどんな顔をしていただろう。そんな事を考えながら家路についた。

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