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1982年放課後、ヘタレ男子と“文科系野球部”の思い出

文春野球フレッシュオールスター2019

2019/07/11

※こちらは公募企画「文春野球フレッシュオールスター2019」に届いた約120本を超える原稿のなかから出場権を獲得したコラムです。おもしろいと思ったら文末のHITボタンを押してください。

【出場者プロフィール】小貫 正貴(おぬき・まさたか) 横浜DeNAベイスターズ 54歳 川崎生まれの横浜育ち。東京の編集プロダクションに入社するも、都市情報誌の編集スタッフとして大阪、福岡で30代を過ごす。現在は編集プロダクションを経営。2015年から横浜ウォーカーにてベイスターズの連載と開幕特集を担当。

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 川崎生まれの横浜育ち、横浜大洋時代からのベイスターズファンだ。29歳で大阪へ転勤し、15年ほど関西に住んだ。1998年のリーグ優勝の瞬間は、甲子園のスタンドで迎えることができた。まさか自分が生きている間に、ベイスターズの優勝を見ることができるとは思わなかった。それほどこのチームは弱かった。

級友のカバンから出てきた野球カードに釘付け

 横浜大洋ホエールズのファンになったのは、1982年、高校2年生の時だ。僕は部活動に所属していない、ヘタレ男子グループの一人だった。きっかけは仲間内の一人で、野球好きのコデラ君が持っていたプロ野球のカードゲームだった。

 タカラから発売されていたそのカードは1チーム30選手がセットになっており、セ・パ12球団分がそれぞれ販売されていた。1チーム500円だったと思う。コデラ君は「中日が優勝したらみんなにトンカツをおごる」と豪語するほどのドラゴンズファン。中日と、巨人のカードを持っていた。

 カードのオモテ面には選手の写真と名前、前年度の成績など。ウラ面には2つのサイコロによる36通りの組み合わせと、すべての出目に「ホームラン」「ライト前ヒット」「ショートゴロ」といった打撃結果が割り当てられていた。レギュラークラスの選手だと、ヒット以上が10~15個。率にすると.278~.417。ゾロ目に長打が配置されていたのも印象的だった。僕以外にも数人が興味を持ったことから、ある日の放課後、コデラ君が遊び方を実演して見せてくれることになった。

机の上のカード選手が生き生きとプレーを始めた

 机の上に向かい合って9枚ずつの選手カードが並べられる。中日は田尾、平野、谷沢、大島といった面々。対する巨人は松本、篠塚、原、中畑……。原や中畑の名前は知っていたが、谷沢や大島は聞いたことがなかった。

「ピッチャー第1球を投げました!」。2つのサイコロが転がる音を合図に試合が始まる。偶数ならストライク、奇数ならボール。このゲームでは1球ごと、ワンプレーごとにサイコロで結果がジャッジされる。コデラ君は一人で両チームを操作。実況を交えながらルールを説明していく。教室の窓からは野球部の練習の声と、金属バットの音がかすかに聞こえてくる。妙な臨場感。

「篠塚がセンター前ヒット! ではここで二塁ランナー松本のホーム突入を選択します」。コデラ君の口上は、実にうまかった。三塁ベースを勢いよく蹴る松本の姿が脳内で再生される。セーフもアウトも出目次第。僕らは机の上の動かぬ選手たちに見入り、サイコロが振られるたびに歓声を上げた。

 その日の帰り道、僕たちはおもちゃ店へ向かった。6人いる。セ・リーグ球団がちょうど揃う。道すがら誰がどのチームを買うかを話し合った。ちょっと強引なサカイ君は真っ先に巨人を選んだ。ひねくれ者のコーノ君は阪神、松岡弘のサインを持っているイーノ君はヤクルトだ。コデラ君は当然中日、僕は大洋を選んだ。その昔、母が川崎球場で働いていたと聞いていたからだ。気弱なサトー君は残った広島になった。

セ・リーグ6チームによる「文科系野球部」が活動開始

「文科系野球部」と命名したのは僕だ。もちろん正式な部活動ではない。体育会系どころか、どの部にも所属していない自分たちを皮肉ったネーミングだ。

 コデラ君がローカルルールを作った。1シーズン3試合ずつの総当たり戦で各チーム15試合を戦う。3連戦が終わるごとに休養日として1日カウントする。先発した投手は中4日空けないと投げられない。つまり先発投手は最低4人確保しなければならない。わが大洋は遠藤一彦、平松政次、野村収、門田富昭でローテーションを組んだ。コデラ君のアドバイスで斉藤明夫は抑えに回った。

 コデラ君は野球全般の知識が豊富だった。打順を組むに当たっては「1番打者は足の速い選手、2番はバント成功率が高い選手がいい。一番いいバッターは4番に置いて、3番は打率重視、5番は長打力のある選手」とアドバイスをしてくれた。

 1番センター屋鋪要、2番レフト中塚政幸、3番ファースト マイク・ラム、4番サード田代富雄、5番ライト マーク・ブダスカ、6番セカンド基満男、7番ショート山下大輔、8番キャッチャー福島久晃。

 これが、僕が最初に組んだラインナップだ。その日帰宅して、初めてプロ野球中継をじっくり見た。現実世界では1番ショート山下、2番センター長崎啓二だった。納得できなかった。カードゲームでは、1番センター屋鋪にこだわることにした。

最初に組んだラインナップは「1番センター屋鋪要」だった ©文藝春秋