文具・日用品ネット通販大手、アスクルの岩田彰一郎社長が、同社の株式約45%を保有する筆頭株主のヤフーから「事実上の解任」を突きつけられた。

 2019年1月、ヤフーがアスクルの消費者向けネット通販「ロハコ」の譲渡を求め、岩田社長がこれを拒否したところから両社の関係が悪化した。「上場企業の指名・報酬委員会が決めたトップ人事が大株主の一存で覆るようでは、日本企業のガバナンスは形骸化してしまう」(岩田氏)。

 徹底抗戦の構えを取る岩田社長が激白する。

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アスクルの岩田彰一郎社長 ©大西康之

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「今日注文したオフィス用品が明日来る」

――7月17日、大株主のヤフーが岩田さんの取締役再任にアスクルの株主総会(8月2日)で反対する意向を表明。これを受け、アスクル側がヤフーに「資本業務提携の解消」を申し入れ、ヤフーがこれを拒否しました。目まぐるしい展開です。そもそもアスクルとヤフーの関係から教えてください。

「アスクルは文房具大手、プラスの一事業として始まりました。プラス創業家の今泉嘉久会長と私が『21世紀のプラスはどんな会社になるべきか』と考え、お客様に直接お売りする通信販売にたどり着きました。最初はファックスを使った通信販売、私を含む担当者4人で1992年にスタートしました。

 アスクルは『今日注文したオフィス用品が明日来る』のコンセプトで成長しました(2000年にジャスダックに上場し現在は東証一部。2019年5月期の売上高は3874億円)。そこへアマゾン・ドット・コムがやってきます。アマゾンに最初に食われるのは我々、カタログ販売だと危惧し、BtoC(消費者向け)ネット通販を立ち上げるためヤフーと業務資本提携を結びました。第三者割当増資で45%の株を持ってもらいました。それが2012年です」

140社のメーカーと知恵を出し合って

――それで始まったのが消費者向けネット通販の「ロハコ」ですね。

「そうです。ロハコの特徴は、既存の商品をただ安く売るのではなく、メーカーさんとの直接取引で独自の商品を開発して付加価値をつけているところです。オープン・イノベーションを掲げ、140社のメーカーさんと知恵を出し合い、マーケティング・データを共有しています」

コピー用紙など、オフィス用品のサプライに強みを発揮してきた ©iStock.com

――その「ロハコ」をヤフーが欲しいと言ってきた。

「2019年1月、ヤフーの川邊健太郎社長が来て『ロハコをアスクルから切り出すことを検討してください』と言われました。業務資本提携の際に取り交わした契約書に『(ヤフーが大株主になっても)アスクルの経営の自主性を尊重する』という趣旨の文言があるので、あくまで『自主的に検討してくれ』というニュアンスでした」