「犯人は従業員でも元従業員でもない」
京都アニメーションが設立されたのは1981年。2006年に放送された「涼宮ハルヒの憂鬱」(UHF系)が大ヒットし、原作のライトノベルは全世界で2000万部を超えるベストセラーになった。アニメ評論家の藤津亮太氏は「京都アニメーション(以下、京アニ)は、業界で3本指に入る名門製作会社」と解説する。
「京アニは非常にクオリティの高いアニメをハイスピードで作り続けています。腕のあるアニメーターが多く在籍しており、緻密な絵でも労を厭わず描くし、キャラクターの動きのセンスもいい。他のアニメ制作会社が『京アニと同じレベルを求められると困る』と言うほどです」
「犯人は従業員でも元従業員でもない」(警察関係者)というが、いかにして侵入したのだろうか。藤津氏は以前に火災が起きた第1スタジオを訪れたことがあるという。
「アニメーターたちの作画机が並ぶ製作スタジオです。閑静な住宅街にある小綺麗な建物で、内装はアニメーターが快適に作業できるように、カントリー調の落ち着いたインテリアになっていました。インターフォンを押して中に入った覚えがあります。セキュリティは一般的な会社と同様でしたが、アニメ製作会社はそもそも出入りする人が多い。不審者が入り込んでも気づきにくい傾向にあるとは思います」(藤津氏)
京アニでは現在もアニメ作品を制作中だった。
「劇場版『ヴァイオレットエヴァーガーデン』や、人気作『響け!ユーフォニアム』の製作が発表されたところでした。多くのアニメーターの方々がいい作品を作ろうと日夜作画に向かっていたところだと思います。
冗談で『アニメ業界は全体でひとつの会社みたいだよね』とよく言うのですが、転職する人やフリーランスで活躍する人が多いので、業界は顔見知りばかりなんです。だから他社とはいえ他人事ではない。業界にはかなり動揺が広がっています」(同前)
現場ではまだ正確な行方不明者数も判明していない。
「心肺停止している人の大半が3階から屋上に上がる階段にいました。燃え落ちた残渣物の下敷きになっている方がいるかもしれず、まだ実際に被害者が何人かは分かりません」(消防局関係者)
消防局によると、被害者は京都府内の病院に救急搬送され、20名の死亡が確認されている。
(※その後、警察により33人の死亡が確認された)
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