1ページ目から読む
2/2ページ目
魂について考える映像作品も
一周するだけでも足が疲れてくるほど広大な森美術館の空間を、塩田は最大限に活用して展示を構成した。それゆえインスタレーションはまだまだある。《集積―目的地を求めて》は、天井から吊るされた無数のトランクがユラユラと揺れる。旅立ちのときに誰しも感じるそわそわした気持ちを表しているようだけど、狭いところに閉じ込められたままついに花開くことのなかった夢想が、力を振り絞ってトランクから脱出せんとしているのだとも想像させる。
いずれのインスタレーションにも人影は組み込まれていないのだけど、つながりや想いがかたちになっていれば、姿かたちがなくとも存在は感じ取れるものだ。
展示の終盤には、映像作品がある。《魂について》だ。子どもたちが「魂のありか」についてディスカッションしている様子が映し出されている。魂はあるのか、ないのか。あるとすればどこからきて、どこに宿り、どこへ行くのか。純真な目で、確信を持って自説を述べる子どもたちの言葉が不思議なほど深く胸を打つ。そういえば会場のあちらこちらで気づいた「ここに何かがある」という感覚は、魂のようなものがそこに巣を張ってこちらをじっと窺っていたのかもしれない。塩田千春の作品はきっと、魂の「依り代」になっているのだ。