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男尊女卑的なものの考えは、日本の古来からの伝統ではない
私は宮内庁御用掛として24年間、皇室の方々の和歌の御相談役をしてきました。長くかかわった美智子さま、雅子さま、紀宮さま達の和歌をみても、感覚の深さ、聡明さに感服いたします。言葉の使い方が見事であるのはもちろん、伝統的な心の奥行きが深いのを実感します。
ひとたび戦争になれば、社会が男性優位になるかもしれません。それでも戦時中、夫や息子が戦死した女性たちの歌を、私の師、折口信夫は評価しました。その歌には、ふくよかで優しい、大いなる母性がにじみ出ていた。さらに戦争による死者の魂のために祈る、深い心がこめられ、「日本女性の強さと優しさ」が表れていました。
男尊女卑的なものの考えは、日本の古来からの伝統ではありません。世界的な風潮として、男性中心の社会が当然という機運があって、それが影響した。とりわけ日本の近代は、日清戦争、日露戦争、太平洋戦争と、男社会が、より強烈に効果を上げる武器を使った闘争に巻き込まれた。近代ヨーロッパが戦争で領土を拡大していった影響を受けた、最近の思想だと思います。
日本の良さは、男性と女性のどちらが優位かなど、単純に決めないこと。女性優位・男性優位にとらわれない歴史と考えていいのです。