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特別対談 近田春夫×矢野利裕 ジャニーズの本質は「踊り子」である

source : CREA WEB

genre : エンタメ, 音楽, 芸能, 読書

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ジャニーズにとって歌は仮歌みたいなもの?

フォーリーブスが1976年に発表したシングル「踊り子」。ジャニーズのさまざまなグループによって歌い継がれている名曲である。左から、北公次、おりも政夫、江木俊夫、青山孝。

――世代がまったく違うお二人が惹かれたひとつの伝統を、今日は深掘りしていきたいと思っています。近田さんの『考えるヒット テーマはジャニーズ』にはジャニーズの音楽の伝統、カラーといった言及が何度もありますが、そうした見方をするようになったのはいつごろですか?

近田 いつだろうね。今はどうか知らないけど、70年代のジャニーズって、同じ外国の曲とかを何代にもわたってカヴァーしていたんだよ。代替わりをしても歌い続けて、その感じがずっと共通していた。

 あと、みんな声質が似ているんだよね。

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 それともうひとつ、これは何かに書いたかもしれないけど、初代ジャニーズは置いといて、フォーリーブス以降のグループは、メンバーの顔が必ず北公次、おりも政夫、青山孝、江木俊夫の4人の誰かの系統にはまるのよ。ジャニーさんの好みなんじゃないかと思うんだけど。

 あと、あの事務所は、青山孝はちょっと違ったけど、やっぱりみんな踊りじゃん。で、歌は仮歌みたいな感じなんだよ(笑)。ロックの人みたく変に英語っぽく歌ったりしなくて、学校でみんなで斉唱するときの歌い方。あんまりハモらないしね。

 不自然な歌い方で当たったのは木村拓哉だけじゃない? 俺の推測ではブラザー・コーンの影響だと思うんだけど。

矢野 (笑)。

近田 みんな素直に、飾らないで歌うから、歌詞が聞き取りやすいのよ。あのまっすぐに歌う感じは、ある世代以降のジャニーズのアーティストにずっと共通している。

 今も基本的にはそうだよね。ハモっていてもハモっているようには聞こえない、みたいな感じ。よく中居(正広)くんの歌をヘタだっていうけど、ジャニーズはみんなあれだよ。そこらへんにずっとある共通性を感じてきたのかもしれません。

――矢野さんはどうですか?

矢野 僕の場合は先にブラックミュージックっていう枠組みがあって、そこから逆算していったときに、歌謡曲の中では妙にジャニーズが引っかかってくる、みたいな印象が最初なんです。

 郷ひろみや田原俊彦ならディスコだし、フォーリーブスは初期は衣装も曲調もGS的だったりしますけど、70年代になる頃にはフィンガー5っぽくなっていたりとか。

 近田さんが今「踊りじゃん」とおっしゃいましたけど、ダンスミュージックという意識がある。それをずっと続けていたのがジャニーズっぽさなのかなと。

 そうすると歌はもうちょいひねってもよさそうなのに、あくまでまっすぐ健康的に歌っているという、そのちぐはぐさが面白いなと思います。

近田 健康的だよね。あれがいいんだよ。

矢野 ソウルだしディスコなのに、すごくさわやかですよね。

近田 小学生みたいな歌い方でさ。

矢野 あとラテンっぽいノリも、昔は歌謡曲にいっぱいあったと思うんですけど、最近はなくなってきましたよね。

 でもジャニーズは定期的に出してくる。南半球への目配りがすごく大事だな、いいなと思ってます。