「日本サッカー、大丈夫?」
昨今、少なからぬサッカーファンがそんな疑問を抱いてきたのではないだろうか。
ロシア・ワールドカップ・アジア最終予選では、初戦でアラブ首長国連邦に敗れる波乱の幕開け。テレビの視聴率は下がり、代表チーム内の不協和音を報じるメディアも……ネガティブな空気が日本サッカー界を覆っている。
ならばここは、日本サッカー界のトップにストレートに聞いてみるしかない。そんな思いとともにJFAハウスを訪れた。
日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長は、国際サッカー連盟(FIFA)理事・アジアサッカー連盟理事・東アジアサッカー連盟会長でもある。
「嫌なことでも、何でも聞いてください」
インタビューの冒頭にこう言うと、快活な声で質問に答えた。
◆ ◆ ◆
――日本サッカー界にとって今年最大の試練が、ロシア・ワールドカップ・アジア最終予選です。「ハリルジャパンは大丈夫か!?」という声もありますが、いかがでしょう?
「確実にオッケーだということでワールドカップ予選を戦ったことは、今までもありません。今回の最終予選では、ホームでの初戦でUAE(アラブ首長国連邦)に敗れて(2016年9月1日、1-2の敗戦)、そういう心配を皆さんに抱かせてしまった。それは事実だと思います。今年は一戦、一戦が勝負の年だと思っています」
――田嶋会長自身、現状のワールドカップ予選を取り巻く「周囲の空気」をどう感じられていますか?
「周囲の空気ということでいえば、昨年よりは今年は良くなってきたと思います。ただ、周囲の空気には惑わされずにやっていこうと思っています。1勝、1敗に対して一喜一憂するつもりはない、これはずっと思っていることです」
――現状では5試合消化時点でワールドカップ自動出場権を得る2位に入っていますが、他国とは勝ち点がひしめきあっています(※首位サウジアラビアとは同勝ち点、3位オーストラリア、4位UAEとは勝ち点1差)
「そうですね。ですから今度(3月23日)のアウェーのUAE戦が大事になります。引き締めた気持ちを日本サッカー界全体で持ち、できうる限りのすべてをやっていきたいと思っています」
ハリルホジッチ監督に、不満をどう伝えているか
――昨年9月、埼玉スタジアム2002でのUAE戦では、レフェリーのジャッジについて会長も怒っていましたよね。
「もちろん、ジャッジについては非常に悔しい思いをしました。ただ、それ以上に僕はチームの出来の悪さが残念でした。そういう意味では、サウジアラビア戦(2016年11月15日、2-1の勝利)のように危機感をもって臨めば、今の日本代表であれば、UAEは十分勝てる相手だとは思っています」
――「イマイチな試合だな」と会長自身が思ったら、それをどう代表チームの関係者に伝えているんですか?
「いつも思ったことを率直に伝えていますよ。良くなかったら、良くなかった、と。勝っても負けても話はします。ハリルホジッチ監督とは会長室でよく話していますよ。1時間くらい、コーヒーを飲みながら」
――ハリルホジッチ監督を巡っては、通訳の問題やコミュニケーションの問題が取りざたされてきました。そこで、監督と選手の間の橋渡し役として手倉森誠氏がリオ五輪後にコーチとして復帰した。監督と通訳、あるいは監督と選手とのコミュニケ―ションの問題はありましたか?
「問題があったとは認識していません。ただ、仮にコミュニケーションで問題があったとすれば、もっと突っ込んで言うべきですよね。お互い理解するまで、妥協せずに。コミュニケーションの不足で結果が左右するというレベルであれば、すぐに変えればいいし、変えていくしかないです。通訳ってパーフェクトにはなり得ない部分があります。一つ言えるのは、監督が納得しているかどうか、です。監督がこの通訳はダメだと思ったら、それはすぐにでも変えなければならないでしょうね」