視聴率の落ち込みについて、どう考えているか
――さて、ここで気になるデータがあります。今大会予選の平均視聴率(ビデオリサーチ調べ)が前回大会予選よりも落ちています。最終予選5試合の平均視聴率が19.02%ですが、前回2014年ブラジル大会の最終予選では8試合平均で28.37%でした。インターネットにより視聴環境は年々変化してはいますが、それを踏まえた上で、この数字の落ち込みについてはどう考えていますか?
「もちろん、視聴率はマーケティングにおいても重要であることは、重々理解しています。ただ2010年大会予選はもっと低かったですよね」
――その通りです。8試合で16.88%でした。
「その中でも、2010年南アフリカ本大会は良い結果を残せたと思っています。視聴率については粛々と受け止めます。ただ視聴率が悪くなったから、何かをしなければならない、ということではない。代表チームが魅力的で、本当に強くて、素晴らしい選手が育ってきていれば、視聴率は後からついてくるものだと思います」
――あくまでもサッカーの本質を追求する。
「我々日本サッカー協会は、日本サッカー全体の発展、そして代表チームの強化を司る組織です。視聴率などの数字だけを追いかけていくと、あらぬ方向にいってしまう」
主力クラスの衰えについて、どう思うか
――こんな声も聞こえてきます。現在の代表チームの主軸をなす本田圭佑、香川真司、長友佑都、長谷部誠といった主力クラスの力が落ちたのではないか。その影響で代表チームが苦しんでいるのはないか、と。
「私は『育成日本復活』をテーマに掲げていますが、そこ(現在の主力選手)を突き上げてくる選手が育っていないんです。過去、4大会連続してU-20ワールドカップに出場することができなかった。18歳、19歳、20歳の時期が一番伸びる時。そこで世界を知るか知らないか、世界の景色を見るか見ないかが、後々大きな違いになるのですが……」
――現在の中堅・ベテランの力はまだまだ必要だと思いますか?
「この間のサウジ戦のように、本当に気合を込めて戦うと、過去の経験を生かして若い時以上のパワーを発揮することがあるんです。ただ大事なのは、自分の所属チームで試合に出ているか出ていないか、です。選手の身体が試合にフィットしていれば、あとは時差などを調整すればいいわけですから。試合勘の重要性についてはハリルホジッチ監督の言う通りで、日ごろからより厳しい環境でやっているのかが大事だと思います」
――シンプルにお聞きします。日本代表はロシア行きの切符を手にすることができると思いますか?
「私は必ず行ってくれると信じています。行くためには何をしなければならないか、できうる限りのすべてをやっていきたいと思っています」
たしま・こうぞう 1957年、熊本県出身。日本サッカー協会( JFA)会長及び国際サッカー連盟(FIFA)理事。現役時代は浦和南高で全国制覇を経験した後、筑波大、古河電工でプレー。1983年、ドイツに留学し、指導者の道を歩む。93年から日本サッカー協会強化委員、専務理事などを歴任し、2016年3月より現職。
写真=杉山拓也/文藝春秋
(後編に続く)