ワールドカップで戦える日本人監督は現れるか
――裾野を広げる意味では自国人指導者の育成も欠かせません。過去、5大会のうち日本人監督としてワールドカップを経験したのが岡田武史(日本サッカー協会副会長、JFL・FC今治オーナー)さんただ一人。「代表監督はやっぱり岡田さんでいいのでは」という声もありますが。
「2大会(1998年大会、2010年大会)やっている実績がありますからね。日本人の指導者で一番大変なのはプレッシャーですよ。特に予選におけるプレッシャー。これは岡田さんにしか分からない」
――日本人の指導者が日本代表チームの監督に。これを望む声も決して少なくないと思うのですが。
「私自身、指導者養成をずっとやってきたので思い入れは強いです。選手を変えられるのは指導者しかいないと思っていますから。自国の指導者が代表チームの監督になってほしいというのは、切に思います。けれども、このグローバル化の時代の中で、日本人でなければならないということは、言えないのかも知れない。逆に日本人指導者が各国で指導してほしいとも思うわけです。そういうグローバルな時代になっていくのだろうな、と」
――2026年大会からワールドカップ出場国が32から48へと拡大することがFIFA理事会で決定されました。例えば日本人指導者が、アジアの代表チームを率いてワールドカップ初出場に導くかも知れません。
「まさしく三浦俊也監督がベトナム代表を率いて(2014年~2016年)、好成績を残しましたよね。私たち日本サッカー界は、世界で戦っているんです。監督は、日本をワールドカップに導いてくれる指導者ということで選んでいるのであって、日本人ありきという考え方ではありません」
――会長自身も様々な戦いがこれからあるかも知れません。責任への重圧は感じていますか?
「育成日本復活を成し遂げるために、私は会長になりました。育成を軽視するととんでもないことになる。日常的な育成の現場はJクラブや学校部活動、地域のクラブチームになりますが、サッカーの根幹となる部分の分析は我々がやっていかなければならない。日本サッカー協会に対する批判はあるでしょう。それは重々承知です。でも我々が未来への指針を示していかなければならない。そう覚悟しています」
たしま・こうぞう 1957年、熊本県出身。日本サッカー協会( JFA)会長及び国際サッカー連盟(FIFA)理事。現役時代は浦和南高で全国制覇を経験した後、筑波大、古河電工でプレー。1983年、ドイツに留学し、指導者の道を歩む。93年から日本サッカー協会強化委員、専務理事などを歴任し、2016年3月より現職。
写真=杉山拓也/文藝春秋