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田嶋会長!「日本サッカー、大丈夫ですか?」#2

日本サッカー協会のトップに不安を直撃

2017/02/09
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 日本サッカー界が直面する課題はワールドカップ予選だけではない。

「子供たちの数は少なくなって、サッカー人口をどう増やす?」

「お隣中国が大金を注ぎ込む中、Jリーグはどう変わる?」

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「日本代表はいつまでも外国人監督でいいのだろうか?」

……といったようにサッカー界の土台となる部分にも疑問が多々ある。

 インタビュー前編では日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長に代表チームの現在について直撃した。元日本代表選手の田嶋会長は引退後にドイツのケルン体育大学で指導理論を学び、JFAの技術委員長も歴任。日本サッカーが発展するための育成システムと指導者育成プログラムを構築してきた責任者でもあった。

 だからこそ後編では、日本サッカー界の「未来」についてのビジョンを聞いてみることにした。果たして10年後や20年後、明るい未来は開けているのだろうか――。

◆ ◆ ◆

巨額の放映権契約で、Jリーグは変わるのか

――育成日本復活を掲げる田嶋会長から見て、Jリーグの発展は欠かせないですよね。

「大事なんてもんじゃないです。Jリーグの強化がバロメーターになっていくわけですから。国内リーグを世界基準に引き上げ、そしてアジアで勝つリーグにしなければならないと思っています」

――JリーグとDAZN(ダ・ゾーン、英国パフォーム・グループのインターネット動画配信サービス)が10年間、約2100億円の放映権契約を締結しました。Jリーグ発展のための資金は手に入れましたが、ずばり会長自身から見て、現在のJリーグは面白いですか?

「私はJ1に限らず、J2やJ3の試合を観にいくこともありますが、面白い試合はたくさんありますよ。ヨーロッパのリーグだってすべてが面白いわけじゃない。どの国のリーグでも、面白い試合、つまらない試合があるだろうけど、でもそれがリーグというものですよ」

――DAZNとの契約によって、何が変わっていくのでしょう。

「今回の新しい放映権契約によって、選手たちがどう動いていくのか、が気になりますね。この夏にヨーロッパの移籍マーケットがオープンになり、海外の選手がJリーグクラブに加わるのか。非常に楽しみですし、そういう部分についても世界基準になっていくのかな、と思います」

 

――中国が国策としてサッカー強化に力を入れ、各クラブがとんでもない資金を注ぎ込んで世界中からビッグネームの選手、監督をかき集めています。

「今の中国のやり方が必ずしも理想的であるとは考えていません。国内リーグのスター選手の年俸が高すぎるということでそれを下げようとしていますし、自国の中国人選手が育っているのかについても検証しているはずです」

――ただ、Jリーグのクラブがアジアで勝てていないのも事実ですよね。

「Jリーグのクラブが目指すべきは、アジアで勝つこと。日本代表であればU-17代表やU-20代表を世界で勝たせること。そのためにも、日本サッカーの根幹をなす、育成、グラスルーツ(草の根の普及)、そして代表強化を忘れずに、日本独自のやり方を続けていきたいと思います。スペインが2010年ワールドカップで優勝した時の主力は、かつて1999年にナイジェリアで行われたワールドユース(現U-20ワールドカップ)で日本が決勝戦で敗れた、あの時の選手たちでした。年代別の代表チームで勝っていくことで、将来のワールドカップの好成績につながるわけです」

少子化が進み、日本サッカーはどうなるのか

――サッカー競技人口についてお聞きします。2014年にはそれまでなだらかに増加傾向にあった4種年代(12歳未満の選手)が減少傾向に入りました。また総務省予測では今年から生産年齢人口(15~64歳の人口)が60%台を割ります。この少子高齢化・人口減少社会にあって、日本サッカー協会は2030年までにサッカーファミリーを現在よりもさらに増やそうと掲げていますよね。これはかなりチャレンジングな目標では?

「この目標達成に向けてやっていこうと考えていますが、サッカーファミリーの定義について誤解があってはなりません。何も野球やバスケットボールなど他の競技から選手を引き抜こうということでは一切ない、ということです。たとえばうちの子は千葉ロッテマリーンズのファンクラブに入っていましたが、彼はサッカーをやっていましたよ。そうなると野球、サッカー両方のファミリーということになりますよね」

 

――国内のサッカー人気は、4年に一度のワールドカップの結果に大きく左右されますよね。それが競技人口にも影響するのではないでしょうか。

「サッカーは世界ナンバーワンのスポーツです。日本のサッカー界がその魅力を発信していく力があり、代表チームがそれを披露すれば裾野は自然に広がるものだと思っています。少子高齢化は我々の力ではどうしようもないのですが、その中で何ができるかを考えなければならない」

――ワールドカップの結果に左右されずに裾野を広げていく。そのための打開策は何でしょうか。

「そこはいかにクラブやサッカー協会が地域に根差しているか、ということになります。日本サッカー協会は47都道府県の地域協会から成り立っていますから。日本サッカー界がモデルとする国の一つであるドイツでは、クラブチームの人気は、代表チームが勝とうが負けようが左右されません。雪がしんしんと降っている中でも、地元のアマチュアチームを応援するような人たちが数百人、数千人単位でいるわけです。その集大成がドイツ代表チームです。そういう意味では日本でもここ20数年、地域に根差すということをやってきています。これはもう50年、100年という単位で実現を目指すべきプロジェクトだと思っています」