Q 自分の服がふつうすぎる
休日に出かけるときは大体、ジョン スメドレーのニットとインコテックスのパンツ、オールデンのローファーです。自分で言うのもなんですが、そこそこイケてるんじゃないかと思ってます。
でも鏡に写る姿が普通すぎて、自分の服がひどくつまらなく思えてしまいます。何かが足りないんでしょうか?(30代・男・会社員)
A ベーシックブランドの安心感に頼りすぎてはいけません。
こんにちは。主に男性ファッション誌で編集やライターをしています。基本的にQ&A方式で、社会とコミュニケーションできるファッションのお話を書かせていただきますので、よろしくお願いします。
いきなり随分と意識の高い悩みが出て驚きました。もちろん、そこそこどころかイケてると思います。大人ファッションの3種の神器とも言えるベーシックブランドで身を固めたら、十分すぎるスペックです。しかしその安心感に頼りすぎてはいけません。「良いものを着る」と「老舗を着る」は同義ではないですから。今どき、30代が休日に街を歩いていて、着用しているブランド名を尋ねられるなんて、まずありません。鏡で全身を見られる距離まで離れたら、生地や仕立てのこだわりなど、伝わりにくいです。
老舗の力を借りると、若いうちは自分を大人っぽく見せたり、年をとると「ブレない貫禄」を表現することができるもの。ただし30代は、仕事もプライベートもファッションも、バランス感が重要です。筆者も、スメドレーもインコテックスもオールデンもたくさん所有していますが、最近はその3つを合わせることがなくなりました。似た価値観を持っているそれぞれを、あえてバラバラで使うと「脱・普通」になります。老舗の固め打ちは「おっさんくさい」に形容されがちです。
デザインや色柄での冒険はオススメしませんが、ブランドやシルエットに「新しい何か」を入れてみては。特にボトムスは、手っ取り早く印象を変える力があります。そして体型が変わりがちな30代は、無理に「美脚」より「隠す」が効果的。オススメは、腰まわりのゆったりとしたテーパードパンツ。脚長効果はありませんが、バランスがいいです。
この冬いちばんはいた<オーラリー>のウールパンツ。ウエストがゴムですがチャックはあります。見ての通り、穿くとふっくらするのですが上品です。
いきなり洋服を変えることに躊躇がある人は、手持ちのバッグを変えるのも効果的です。ちなみに安直に靴を変えるのは近道ではありません。インコテックスのような正統派なスラックスは、意外と足元を限定しますので。最近のお気に入りは、2007年に生まれたカリフォルニアのバッグブランド<BAGGU>のトートバッグ。よくあるレジ袋の形でレザーと言うギャップに惹かれました。アメリカ製ってのも、老舗好きには好感度高めです。取扱いも日本各地にあるようなので、そこまで敷居は高くなさそうです。
セレクトショップから百貨店から空港まで、いろんなところで目にする<BAGGU>。これは2016年の秋冬コレクションのもの。肩かけすると、形が綺麗です。真っ黒のレザーっていうシンプルなデザイン。
最後にですが、個人的には、髪型をちゃんとするだけで、普通を正当化できることができると思います。自分が若くないと実感するのは、体型だけでなく髪も同様。’90年代風味なサラサラヘアが通用しにくい年齢。整髪料をつけて、身だしなみをちゃんとするだけで、スタンダードな洋服がスタイリッシュに見えるものです。ちなみに理美容グッズといえばの阪本高生堂のグリースを愛用しています。これは美容室などでしか取り扱いがないようですが、瓶入りとはなかなか洒落ていますし、何よりベタつかないのに、ホールド力が素晴らしい。
行きつけのバーバーで購入した阪本高生堂のクールグリース「SUPRERIOR」はパリのファッションウィークで展示されて話題に。新宿伊勢丹などでも購入できます。瓶が結構でかくて、使い切るのには半年弱かかったくらい、コスパが高いです。
と、いうように筆者もアラフォー世代。ファッションの悩みは洋服だけで解決するものではない、を信条にお役に立てる情報を書き綴っていきたいと思います。