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「163キロ投手の肘のダメージは未知数」大船渡佐々木・登板回避に元日本代表クローザーは「英断だった」

大船渡・佐々木問題を考える #3

source : 週刊文春デジタル

genre : エンタメ, スポーツ, 社会

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肘にかなりの負担がかかる佐々木投手のフォーム

 大会映像で佐々木投手のフォームを見ましたが、肘にかなりの負担がかかっているのは明白です。腕をびしっと伸ばすタイプではなく、長い脚を高く上げることで反動をつけ、リリースの瞬間、長い腕をしならせ、肘をたたむようにしてボールを投げる。あの独得のピッチングフォームが最速163キロという高い“出力”を生み出しているわけで、彼の最大のストロングポイントだと言えます。

 しかし、その“出力”をすべて受け止めているのが、彼の肘です。1球1球、肘に受ける衝撃と消費は他の選手とは絶対的に違うはずです。しかも、大事な試合では、りきみも出る。ひとつ間違えれば、靭帯断裂や骨折までいったかもしれません」

岩手大会決勝で花巻東に敗れ、グラウンドに一礼する大船渡の佐々木投手(左から2人目) ©共同通信社

150キロ超えは指導する側も未知数

 馬原氏が高校生の時は140キロの球を投げても「豪速球投手」と呼ばれる時代だった。それが現在では、トレーニング技術が改善されたこともあり、高校生でも150キロ超えが珍しくない。しかし、そのぶんケガをしやすくなっているのも事実だという。

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「当時、高校生で150キロを投げていたのは、松坂大輔さん(中日ドラゴンズ)や新垣渚さん(元ダイエーホークス)くらいでした。その頃は走り込みと投げ込みを繰り返して体力をつけるのが普通だったのですが、最近ではハイテクマシンなどを使った筋トレなどで体を大きくして、160キロ近くの球を投げるピッチャーがたくさん出てきているわけです。けれど、彼らについては、指導する側としても未知数なことが多く、監督も使い方が難しくなっているというのが現実です。

 大切なのは“休ませる”ことなんです。ただ単に何もしないで体を休ませるんじゃなく、上手に休ませるということが必要です。つまり、選手の表情や動きを見て、ケアしながら休ませる。投げた次の日は休ませる。高校野球では、監督に投げろと言われたら投げるというのが普通ですが、本来はトレーナーやコンディショニングの知識のある専門家が疲労の度合いを判断してストップさせるべきなんです」