特に、甲子園常連校のような本格的に活動しているチームには「専門的なトレーナーが必要」と馬原氏は主張する。
「専門家であれば、筋肉の張り具合でわかります。筋肉にも張っていていい場所と、張っていたらダメな場所があるんです。ダメな場所で張りの症状が出てきたらストップをかけてあげればいい。資格を持っている人間ならば、選手の身体に触ることで適切な判断ができるんです。
ケガをさせないコンディション作りは、まずは無理をさせないこと。知識さえあれば、日によってメニューが変わるのは当然です。精神ではなく、肉体を鍛えなければいけないわけで、大会本番で一番のベストコンディションに持っていってあげることこそが指導者の仕事なんです。それでも、選手の体のことを監督一人に委ねるというのは、なかなか難しい。怖さで判断しきれないんじゃないかなと思います。
指導者側の資格制度をもっと充実させるべき
私が現役のときもそうでしたけど、いまだに資格を持たない指導者って多いんです。マッサージとかストレッチとか。私自身も経験と知識を踏まえて教えて欲しかったという思いがあります。
自分は肩を壊し、手術という経験を経て、最後にはトレーナーに対して自分で『マッサージはこういう風にしてください。ストレッチはこういう風にしてください』と指示をしながらコンディションを整えていました。そんなこともあり、勉強を始めたんです。今回の騒動を見ても、高校野球には休むことがダメという風習がなぜかまだ残っていますよね。
本当は、大会中は軽く動くウォーミングアップだけで十分なんです。たとえば朝7時に起きて散歩をして、軽くキャッチボールをして、バットを振る。それだけで体は十分動くようになる。自分が高校の時は、本当に練習しすぎて疲れ果てて、試合で力が出せませんでした。
高校野球でも指導者の資格取得をもっと進めるべきだと思います。指導者が講習を受けて、勉強会に出て、ちゃんと体のことを学ぶ。独学でやってきた指導者と、ちゃんとした知識を学んだ人では、選手に対して適切な指導ができるかどうかに大きな差が出る。実際には、経験と知識を兼ね備えているという人はなかなかいないのですが、大船渡・佐々木投手のような選手側の急激な技術革新に対応して、より高度な専門知識を持ったトレーナーが増えてしかるべきでしょう」