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「本当にそれでいいのか?」 元スワローズ・今浪隆博が、迷える廣岡大志に伝えたいこと

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/08/11

 文春野球ヤクルトに「あの男」が帰ってくる。昨年、2年目を迎えた文春野球ペナントレースにおいて、ヤクルト日本一の立役者となった今浪隆博氏。現役を引退して2年が経つにもかかわらず、今もなお「今浪チルドレン」と呼ばれる熱狂的なファン、いや信者を持つ今浪さん。最下位に低迷する古巣について、彼は今何を思っているのか? 「今浪節」と称されたあの話芸に触れたくて、僕は今浪さんにコンタクト。8月某日、都内某所にて「緊急ミーティング」という名の、ただの呑み会を開催した。以下、5時間呑み続けた顛末の一部をご紹介したい。

熱弁する今浪隆博氏 ©長谷川晶一

プロ野球は不平等な世界だから

――今浪さん、お久しぶりです。このクソ暑い中、ヤクルトはストレスのたまる試合が続いています。今のヤクルトをどう見ていますか?

今浪 うーん、良くも悪くもヤクルトらしいですよね。一昨年は96敗だったのに、昨年は一気に2位になって、今年は借金が20くらいあるわけですよね。成績が目まぐるしく変動し、極端すぎる(笑)。「借金20」というのは、そうそうあるものじゃないですからね。いい選手がそろっているだけに悔しいし、もったいないですね。

――今浪さんは、今でも古巣であるヤクルトと日本ハムの試合結果、スタメン、そして選手たちの成績は欠かさずにチェックしているそうですね。今のヤクルトについて、何か気になる点などありますか?

今浪 選手たちのモチベーションがどこにあるのかは気になります。プロ野球選手って、チームが強いときには「勝つこと」がモチベーションになるし、チームの成績がよくないときには「個人成績」がモチベーションになるわけですけど、現状のチーム状況だと個人成績に目が向いているのかもしれないですね。ただ、プロ野球選手は個人事業主だから、それでも別に構わないと僕は思っていますけど。

――個人的に気になる選手はいますか?

今浪 何人もいるけど、まずは(山田)哲人ですね。「山田哲人」という存在は、成績はもちろん、存在感も含めてチームの魂であり、顔だと思うんです。普段はなよなよしいお兄ちゃんなのに、グラウンドでは大活躍、プロ選手としての華もある。毎年、きちんと成績を残し続けているから、哲人に求めるものがどんどん大きくなってくる。でも、彼はそれを軽々と越えてきた。だからスーパースターなんです。今年だって、決して見劣りする成績じゃないけど、ファンの目も肥えてしまった今、ここまでの哲人の成績に物足りなさを感じている人もいると思うけど、その点は「大変やなぁ」と思いますね。

――今浪さんの引退後に入団してきた村上宗隆選手についてはどんな印象ですか?

今浪 やはり、能力はすごいと思いますよ。僕が思うのは小川(淳司)監督をはじめとする首脳陣が、「我慢強く、使い続けているな」ということですね。小学生の頃から、僕たちは「みんな平等だ」って習って来たわけですけど、プロ野球の世界は決して平等じゃない。ドラフト順位や入団の経緯によって、そもそもの注目度、期待度はまったく違うし、能力のある選手はある意味、えこひいきされるのは当然の世界。その中で、村上はチャンスを与えられ、守備面ではミスを重ねながらも、ホームラン、打点を稼いでいるのは立派ですよね。

迷える廣岡大志に、どうしても伝えたいこと

――今浪さんは引退時に、「大志に押し出されたから辞める」と言っていました。プロ4年目を迎えた廣岡大志選手については、どう見ていますか?

今浪 せめて、自分の身長分(の打率)は打ってほしいですよね(苦笑)。僕が気になるのは、大志自身の中で、「将来、どんな選手になりたいのか?」がぶれているんじゃないのかなってことなんです。大志の魅力はスケールの大きいプレースタイル。でも、最近の大志の姿を見ていると、どうも「小さくまとまろう」というようにしか見えない。結果がほしいからスイングが小さくなったり、確実性を求めたりするのはある意味、当然のことかもしれないけど、「本当にそれでいいのか?」という思いはあります。もちろん、本人がそれを望んでいるのであればそれでも構わないけど、僕は「もったいないな」と思いますね。

高卒4年目の廣岡大志 ©時事通信社

――すでにプロ4年目を迎え、まさに正念場を迎えていますね。

今浪 いやいや、「すでに」ではなく、「まだ」ですよ。高卒で4年目ということは、進学していたとしたら、まだ「大学4年生」ですよ。高卒で就職したとしても、一般的に企業で高卒4年目の社員に社運を賭けた一大プロジェクトを任せますか? 任せるはずないじゃないですか。そういう意味でも、僕は「まだ4年目」だと思いたいですね。日本ハムの渡邉諒のように高卒5年目くらいから台頭し始めるケースもあるんだから、まだまだ大志には焦らないでほしいですよ。

――廣岡選手に伝えたいことは「まだまだ焦るな」ということですか?

今浪 そうですね。「5年後、10年後、大志はどういう選手になっていたいのか?」ということをもう一度、きちんと考え直してほしいし、自分で自分の価値を貶めるようなことだけは避けてほしいと思いますね。