大切なのは「ふざけ」「いたずら」「ずる」「脱線」
——思春期の生意気な子どもたちを前にしてもイモニイは怒鳴ったりしないじゃないですか。そんなんで生徒指導できるのかと思うひとも多いと思うのですが。
「そもそも子どもが『ふざけ』『いたずら』『ずる』『脱線』をしているときは、いちばん自分の頭で考えているときなんです。それをむやみにストップしてしまうのはもったいない。むしろそれを活かさないと。一般的には悪いとされることのなかにも、子どもの良いところを認めるようにすると、子どもはどんどん自分で考える子になっていきます」
——よく「ありのままの子どもを認める」って言いますけど、いきなりありのままを認めるって言われても、普通のひとは何からしていいのかわかりませんよね。いわゆる「悪さ」のなかにも子どもが本来もつ輝きを見いだそうとすると、それだけできっと子どもを見る目が変わって、いつの間にかありのままを認められるようになりそうですよね。
「でも状況によっては僕も全然怒りますよ。個々はきちんとしていても集団になると全然ダメっていうことあるじゃないですか。考えて『悪さ』をしているというよりは、考えないで堕落して行くみたいな。そういうときに注意とか、ハッとさせるとかは、全然使えばいいと思っているし。まず、『怒る』っていうのはアリだと思うんですよ。『怒る』っていうか、『叱る』か。そうじゃなくて、人格を攻撃しちゃったりとか。それ、できちゃうじゃないですか、ひとって。そういうときに、自分の怒りを正当化しないっていうことのほうが大事だと思うんですね。だから僕も全然ありますよ。ひとよりは少ないと思うけど」
「難なくできていることを指摘してあげる」
——先生が睨みをきかせて威圧するみたいなのはアリ?
「それが得意で、それによって生徒が安心するならアリじゃないですか。僕の場合はそういうのが下手だからやりませんけど」
——イモニイは子どものやる気を引き出す名人ともいわれていますけど、コツは何ですか?
「子どものやる気を引き出したいなら、いま難なくできていることをどんどん言ってあげることですね。絶対にそこですね。本当にささいなことでいいので、その子が当たり前のようにやってしまっていることを指摘してあげると子どもは変わりますよ。逆に、褒めることが目的になってしまうのも危険なんですけどね。あるサマースクールに参加したときに実際に見たのですが、ただうるさく大げさに褒めているひとがいました。どこかで習ってきたんでしょうね。でも全然子どもに響いていないんです。子ども見てたらわかると思うんですけど……。見ないで褒めてる。褒め方のパターンがあって、ハウツーになっているんですね。ファストフード店の『いらっしゃいませ~』みたいに」