野良猫とノネコの線引きとは?
国内ではペットとして飼われている猫を「飼い猫」、集落で人から餌をもらっている猫を「野良猫」、人手を離れて自然の中で自立している猫を「ノネコ」と定義している。動物愛護法では猫を「愛護動物」とみなし、みだりに殺したりすれば2年以下の懲役か罰金が科される。一方で、ノネコは鳥獣保護法の「有害鳥獣駆除」という形で自治体が捕獲することが可能になる。行政が野良猫を殺処分すれば「殺処分数」としてカウントされるが、ノネコとして捕獲し、殺処分する形なら殺処分数にカウントされない。
「つまり、ノネコの定義に当てはまらない猫にまで枠を広げて、ノネコ扱いにして処分すれば、環境省が掲げるペット由来の猫を極力殺処分しない方針とも調整がとれるということです」(同前)
実際、野良猫とノネコに明確な線引きはない。
本計画に関わったA氏も「目の前にいる猫が飼い猫か野良猫かノネコかというのは実証不可能」という。
森林部にいる猫はとりあえず捕獲
「本当に識別するのなら猫の毛をとってDNA鑑定をしたり、胃に人由来の食べ物が入っているかどうかをチェックしなければならない。この概念にぶらさがっている限り、実行的な政策はできません。
ですからクロウサギが猫に食べられないように、森林部にいる猫は野良猫であろうが、ノネコであろうがとりあえず捕獲する。捕獲された猫のうち所有者がいる、つまり飼い猫なら返還をする。所有者がいない猫は譲渡の機会を与える。譲渡の機会を得られなかった個体は残念だけど殺処分をする。そうして猫の繁殖スピードより、捕獲スピードをあげていかなければ生態系は維持できないでしょう。ですから“これしかない”というか妥当な計画だと思いますね」
たしかに猫の繁殖スピードはすさまじく、気候によっては1年間に3回の出産、それも1回に5、6匹の子猫を生む。A氏の理論は筋が通っているようにも感じられる。
だが「有害鳥獣駆除」を適用して猫を殺処分するにあたり、現状、本当に生態系が維持できていないかを勘案しなければならない。
2016年度奄美希少野生生物保護増殖検討会でB委員が次のような発言をしている。
〈ひとつ重要なことはアマミノクロウサギにしてもケナガネズミにしても(中略)回復しているのです。世界中が見ても私が見ても奄美大島は素晴らしい成果が出ていると思います。そういう成果があがっているところで、むやみに猫の問題を過大に問題視する必要はない。(中略)特に世界自然遺産の登録の時に過大に問題を表沙汰にするというのは、あまりよいことではない。誰も得しない〉(2017年2月18日の議事録)
ノネコ管理計画がスタートするおよそ1年半前のことだが、この言葉は生態系保全できないほど猫は希少種を食べていないという根拠になるのではないだろうか。