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「余命半年の宣告から3年、“楽観的”が何より大事」――大林宣彦が語る「理想の死のかたち」

映画監督・大林宣彦が語る「大往生」#1

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3日後に、余命は3カ月になったが……

 余命半年の宣告を受けた3日後に、余命は3カ月になりました。がん細胞は、倍々ゲームで増えていく。しかし、その後抗がん剤治療が効いて、今は“ 余命未定 ”。

 こんな話があります。

 アメリカで、楽観的な人を数百人、悲観的な人を数百人集め、長期に渡って調査しました。その結果、楽観的な人には薬がよく効いて、悲観的な人にはあまり効かないことがデータに表れたのです。

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 余命宣告から回復した僕には、がん仲間を励ます役目があると思っていますが、みんな落ち込まず、楽観的でいることが何よりも大事なのだと伝えたいですね。

「大往生」という言葉は面白い。大往生とは、何の苦もなく、安らかに大満足して死ぬこと。でも「大」を外して「人を往生させる」と言うと、迷惑をかけるという意味になりますよね。自分は大往生して、周りを往生させないのが一番です。

 大往生した後、生まれ変われるとすれば、また映画作家になりたい。勉強し直して一から始めるのではなく、これまでの自分の続きをやりたい。

©山元茂樹/文藝春秋

 映画には、内容でも、技術的にも、未開発のことがまだまだあります。

 たとえば「フェードアウト」は、光が段々消えて最後は真っ暗になる手法です。これは、映画がモノクロフィルムから始まったから生まれたもの。では、映画が最初からカラーだったらどうだったでしょうか。もし、最初からカラーフィルムで映画が作られていれば、フェードアウトは黒になって終るのではなく、赤とか青になっていたかもしれません。

 いま編集を終えたばかりの新作では、白と黒を一切使わない作品を作りました。どんなふうになるか? それは観てのお愉しみですが、映画にできること、やるべきことは、まだまだあるのです。