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突然の「進退伺」報道 ヤクルト小川淳司監督の「気遣い」と「優しさ」について

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/09/08
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残り13試合、どう戦うか

 このやり取りをした当時、小川さんはSD(シニアディレクター)という立場にあった。10年シーズン途中に監督代行となり、翌11年から14年まで監督を務めた後のインタビューだったが、まさかその後、再び監督要請が来るとは本人も思っていなかったことだろう。「シーズン96敗」というどん底状態を受け、18年から再び監督となった。この年、宮本慎也ヘッドコーチ招聘を筆頭にコーチ陣を刷新。最下位から2位にチームを引き上げた。しかし今年、故障者が相次いだこともあり、チームは下位に低迷し続けた。

 5月中旬からは「16連敗」という苦しい時期も味わった。この間も、WEB連載のためのインタビューは行われた。このとき、監督の目の下のクマがあまりにも色濃く浮かんでいたことに僕は驚いた。眠れない日々が続いていたのだろう。それでも、インタビューには誠実に答えてくれた。ハッキリと「あれは自分の采配ミスです」と認めることもあったし、投手の継投や選手起用の意図を尋ねると、きちんとその理由を話してくれた。

 この連載は、ペナントレースと同時進行で進むスタイルを取っているため、具体的な采配については書けないこともあった。それでも、インタビュー現場において、小川監督はきちんと質問に対峙し続けた。それは、一インタビュアーにとって、本当にありがたいことだった。

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 前述したように、来シーズンのヤクルトの監督が誰になるのかは、現時点ではわからない。先の記事にあったように、高津二軍監督が一軍に昇格するのか、「ブンブン丸」こと、池山隆寛氏が、久々にヤクルトのユニフォームを着るのか? あるいは、球団からの要請を受け、小川監督が来年も指揮を執るのか? 後任監督の最有力候補と目されていた宮本ヘッドは本当に退団してしまうのか? 今はただ正式発表を待つしかない。

 いずれにしても、今シーズンはまだ終わっていない。残り13試合は、「小川監督・宮本ヘッド」体制が続く。CS進出はもうない。5位浮上も難しいだろう。それでも、まだ13試合残っている。この報道を受けて、選手たちは何を思うのか? 「小川・宮本体制」はどんな野球を披露するのか? 最後の最後まで意地を見せてほしい。願うのはそれだけだ。

 すでに夜は明け、朝を迎えている。時刻は午前5時17分になっている。カラスが鳴く声が聞こえる。台風15号を予感させるものは、いまだ何もない。穏やかな朝の風景が窓の外には広がっている。本日17時からは、神宮球場で巨人戦が控えている。故障に苦しんだ田川賢吾が先発する。長い1日が始まる。

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