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出たくても出られない……ホークス・加治屋蓮投手、苦しんだからこそ見つけたこと

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/09/09
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丸刈りで頭も気持ちもスッキリ

 8月に2軍降格してすぐ、タマスタ筑後での2軍練習を覗きにいくとそこには丸刈り姿の加治屋投手の姿がありました。

 実は、昨年もそんなことがありました。昨年7月22日にプロ初黒星を喫するなど精彩を欠き、1点台をキープしていた防御率が2点台、そして3点台中盤へと跳ね上がっていきました。あの時は自身の不甲斐なさから気持ち新たに一から頑張ろうと頭を丸めたのでしたが、今回はなぜなのでしょう? 髪型を見ただけで落ち込んでいるのかなとちょっと心配になりましたが、清々しい表情で加治屋投手は答えてくれました。

「髪の毛に悪いものを乗せて一緒に削ぎ落とそうと思って切りました」

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丸刈りから数週間。髪伸びるのが早い加治屋投手(笑) ©上杉あずさ

 目鼻立ちがはっきりしている加治屋投手、丸刈りがよく似合っているなと思うのは私だけじゃないはず(笑)。頭も気持ちもスッキリしたところで、再奮闘に期待がかかります。

 丸刈りパワーのように初心に返ることも大事なことですが、加治屋投手は当然“今”も大事に前に進んでいます。昨シーズン培った経験を生かしつつ、今の身体で勝負していかなければならないのだと現実を受け入れながら、進化するために試行錯誤しています。

「パワーアップしていかないと今年苦しんだ意味がなくなる……」

 毎年毎年、生活が懸かっているプロ野球選手という職業。立ち止まっている時間はありません。「今年を諦めたわけではないけど、今は必要とされていない」と冷静な目を持ちつつも、静かに闘志を燃やし、“今”出来ることを一生懸命全うしている加治屋投手の真っすぐさに心打たれました。

 また、苦しい経験からはこんな発見もありました。

「今年、すごく思ったことがあるんです。負けている試合や点差が開いている試合で投げれるピッチャーがいるからこそ“勝ちパターン”があるんですよね。もちろん逆もそうですが」

“勝ちパターン”を任されている時には目の前の試合に必死でそんなことを考えたこともなかったといいますが、いろんな場面で登板したり、ブルペン待機をする中で大事な気付きがありました。試合展開次第では登板過多になる投手、登板間隔が空く投手いますが、ブルペン陣みんなで助け合えているから“必勝リレー”が成立しているんだと仲間たちへ敬意を示しました。技術のみならず、心の中の進化も止まらない加治屋投手でした。

 去年のファイターズとのCSファーストステージを思い出して下さい。第2戦、決勝打を許して敗戦投手になりましたが、翌日同様の場面でマウンドに上がり、見事“涙のリベンジ”を果たしました。このシーンに心打たれたホークスファンは多いはずです。
多くの修羅場を潜り抜けて強くなった加治屋投手! リーグ優勝へのラストスパート、そして3年連続日本一へ向かうホークスに、より一層成長した加治屋投手の力が必要になるときはきっとくるはずです。

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