2016年のセ・パ交流戦で打率.451、5本塁打、12打点、6盗塁でMVPに輝いた男と言えば、まだ記憶に新しいと思う。そんなホークスの城所龍磨さんが昨シーズン限りで15年間の現役生活にピリオドをうった。ホークス球団から引退セレモニーの場まで用意されたというのは絶対的レギュラー選手ではないにしても成功者&功労者に違いなく、何よりホークスファンから愛されすぎた職人野球選手だからだ。
試合終盤になるとコールされてグランドに颯爽と出てくる起用のされ方は、流れを変える役割&守り勝ちの為の職人として守備走塁のスペシャリストと言われるようになり、『キドコロ待機中』というあまりにも有名な言葉を生み出した。本人の引退セレモニーのスピーチでも『待機ばかりしていた15年間でしたが……』としみじみ語る場面があったほどだ。
待機をし続けて15年間プロ野球選手が出来るというのは並外れた身体能力とセンスが光るからこそで、城所選手はホークスファンの誇りでもあった。
そんな城所さんが引退後の現在、“ホークスジュニアアカデミー”という所でジュニアの育成をしているというセカンドキャリアの話は聞いていた。しかし、普段は子供達も学校に行っているため具体的に平日業務で何をしているのかを聞いたことがない。
8月19日の月曜日、ヤフオクドームの中にある“英国風パブHUBヤフオクドーム店”という飲食店に城所さんがいらっしゃるという事なので会いに行ってみた。城所さんが来るというのを知っていたファンの方も多く、城所さんのレプリカユニホームを着て待ち構えている人もたくさんいた。
HUBで「キドコロバイト中」
京セラドーム大阪でのホークスVSライオンズの試合が10台ほどあるビジョンで生中継される店内ではパブリックビューイングイベントが開催されていて、店内はホークスファンで溢れていた。
沢山のドリンクメニューと食事を楽しみながらオシャレな空間で野球観戦はあまりにも贅沢な時間と言えるだろう。集まったお客さんにとって共通の話題である“ホークス”をつまみにどんどん知り合いが増えていく手応えも最高だ。
そんなイベントのドリンクカウンターの中に城所龍磨さんがいた。
お客さんの注文に応えてビールサーバーを扱うその手つきは、守備走塁のスペシャリストの頃の豪快なスピードではなく、小さな動きでむしろ繊細な作業のように見えた。それを見たお客さんからは“キドコロ注ぎ中”とか“キドコロバイト中”などと声が上がっていた。
なにせホークスの生え抜きの人気者が注ぐビールとあって、サーバーを操る城所さんをファンが一斉に写真で収めるというのも微笑ましい光景だった。
実はこれ、城所龍磨さんと一緒に見る“鷹の祭典in大阪”のパブリックビューイングイベントの最中に突発的に発生した余興だったのだ。
「僕、野球しかしてこなかったからバイト経験も無いし、今日はHUBの中で初体験をいっぱいしたいと思って来たんですよ(笑)」
そう笑顔で話す城所さん。なんて好奇心旺盛な方なんだろう。お客さんからはカクテルの注文も入り、その分量をHUBのドリンク担当スタッフに聞きながら手際よく混ぜていた。