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野球選手でやり残したことは?

 ひと通りドリンクを出し終わった後はマイクを握り、試合をみんなで観ながら城所さんがファンの質問に答えるシーンがあった。その答え一つ一つが誠実で引退した後もファンの心を“鷹掴み”していた。

――城所さんが上手いと思う外野手は誰ですか?

「ロッテマリーンズの岡田選手ですね。彼と僕は同じ考え方なんです。バットに当たる前に打球の方向に走るんですよ。あのコースでこのバッターならここに飛ぶってわかるんです。だから一歩目が岡田選手は速いですし、そこからのレーザービームが一歩目が速かった分アウトになったりするんですよね」

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 バットに当たる前に打球に向かって走る? 凄い話である。書きあがる前に原稿を読む感じか? 箸をつける前に舌鼓をうつ感じか? とにかくイメージを膨らませてないと出来ない技だ。

――柳田選手が怪我から復帰したニュースを見てどう思いましたか?

「あれは僕もヤバかったですよ。ネットがザワツイテるから何かなぁって思って調べたんですよね。そしたらギータが泣いたって出てて。あのギータが2軍戦に出られた時点で涙を流すとかよっぽどですよ。あれだけ底抜けに明るい男が苦しくて仕方なかったんだろうなぁって僕もグッときました。やっぱりリハビリとかって不安になるんですよね。僕も本当に気持ちが分かるし、頑張って欲しいなぁって思います」

 城所さんの優しい言葉に涙目になるファンもいた。

レジをうつ城所さん ©加藤淳也

 パブリックビューイングも終盤に差し掛かった頃に、城所さんから「さっきドリンクを作ったんで今度はレジ打ちがしたいんですけど、やらせてもらっても良いですか?」という希望が出た。どこまでも経験値を上げたい愛すべき男だ。

 HUBの店長がすかさずレジ清算の指導にあたって公開社会体験が始まった。電子マネー支払いも現金払いも習得した城所さんは“キドコロ見習い中”といったところか(笑)。

 無論、この城所さんの姿を見てお客さんが物凄く喜ぶのだからエンターテインメントとしても素晴らしい。こんなイベントは野球選手のセカンドキャリアの中で率先して企画してほしいと素直に思えた。

――城所さん、野球選手でやり残したことはなんですか?

「もう叶う事はないですけど、やっぱりプロ野球選手になる時に憧れた1億円プレイヤーになりたかったなぁというのがありますねぇ。これは控え選手じゃなれない高い壁だからですね。今の若い子にもよく言うんです。便利屋も大事だけど、レギュラーになって稼ぐ方が良いからなって(笑)」

 そう気さくに答えてくた。

筆者との記念撮影 ©加藤淳也

 もしも城所さんが現役の時にリプレー検証制度があったとしたら、あといくつ盗塁が増えていただろう? そしてあといくつのファインプレーが成立していただろう? 紙一重で魅了してくれていた城所選手だからこそ、今の制度がもう少し前から出来ていたらと悔やんでしまうホークスファンはきっと多いはずだ。

 そしてホークス球団のスタッフとして、ホークスジュニアアカデミーで守備走塁のスペシャリストを育成し、“待機中”でも夢を持てる後世を輩出してほしいと願うばかりだ。

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