こうして女性らは、しばらく売春を強要される日々が続いた。だが8月17日になり、監視の目が緩んだ隙を見て韓国のブラジル大使館に連絡。大使館の通報で韓国警察は一山の違法マッサージ店、また坡州市の一室から、計7人全員を救出した。犯人の40代男ら計5人は、特殊監禁、人身売買、売春斡旋などの容疑で逮捕されている。
BTSはブラジルで10万人動員
ブラジルは、早くからK-POP人気が根づいた国の1つだ。すでに00年代初頭から韓流ドラマが浸透し始めていたが、K-POPの現地プロモーションが本格化したのは2011年から。ちょうど日本でも第一次K-POPブームに沸いていた時期だ。すでにK-POPにハマっていた日系ブラジル人の若者も、その媒介役を果たしたといわれている。
さらに翌2012年にPSYの「江南スタイル」が世界的に大ブレイクすると、ブラジルでもK-POPの認知度が一気に高まった。現在では若者層を中心に音楽、パフォーマンスからファッション、メイクアップまで、影響力を振るっている。BTSこと防弾少年団が今年5月に行ったサンパウロのスタジアムでの公演は、10万人のファンを動員した。
だがこうした海外のK-POP人気も、売春業者たちにとっては新しいメシの種にすぎなかったようだ。
韓国ではかねてから、外国人女性の売春が社会問題化してきた経緯がある。2018年に売春で摘発された外国人は、前年の954人より24%多い1182人だ。
なかには今回の事件のように、望まない売春を強要されるケースも少なくない。最近では2017年7月、釜山市でタイ人女性が救出された事件が話題を呼んだ。この女性は同年3月、マッサージ店に勤務する約束で訪韓。だがやはりパスポートを奪われて雑居ビルの一室に監禁され、売春を強要されていた。救出のきっかけは、覚えたてのハングルでSOSメッセージを書いた紙きれだ。監視つきで買い物に出た際こっそり店員に手渡し、警察の捜索につながった。
2018年9月にはさらに、タイ人女性約300人を韓国に呼び寄せて売春をさせていたブローカーら24人が捕まる事件も起きている。ブローカーらは、韓国のマッサージ店で働けば儲かるなどと説明して女性らを観光ビザで入国させていたという。パスポートを取り上げて行動を監視するなど、こちらの事件もブラジル人のケースと手口はよく似ている。
そのほかカザフスタンでスカウトした女性に虚偽の難民申請をさせて風俗店で働かせる、偽装結婚で入国させたベトナム人女性に売春をさせるなど、手法も多様化してきた。
世界で高まるK-POP人気を悪用した犯行には、日本も警戒したほうがいいのかも知れない。