食べたものを溶かす膵液や、血糖コントロールに欠かせないインスリンなどのホルモンを分泌する膵臓。消化器に分類されるが、胃や大腸と違って臓器そのものが痛みなどの症状を発することが少ないため、糖尿病の人を除けば、日常生活でこの臓器を意識する機会はあまりない。
だが、そんな膵臓も「がん」となると途端に存在感を示してくる。
「見つかった時には手遅れ」「あっと言う間に命を落とす」
そんな恐ろしい情報だけが付きまとい恐怖を植え付ける。
5年生存率はわずか9.6%
確かに膵がんの治療成績はよくない。2019年8月8日に国立がん研究センターが発表した「がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計」によると「がん全体」の5年生存率66.1%に対して、膵がんはわずか9.6%に過ぎない。生存率が一桁なのは膵がんだけで、一般的に治療が難しいとされる肝がんでも40.0%、肺がんが40.6%、食道がんが44.4%だ。
現代人に脅威として立ちはだかる膵がん。しかし膵がんも最初から「手遅れ」の状態で生まれるわけではない。他のがんと同じく「早期」から始まってステージを進めていく。問題はその成長が極めて速く、またその段階で自覚できる症状がきわめて乏しい点だ。