昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2019/10/01

 Aは再び未知を誘い出した。「精神科医をしながら、声優もしている。北大の研究室で研究もしている。君はダイヤモンドの原石だ。ダイヤモンドは磨けば光るけど、磨かなかったらそのままだ。もっと磨けば光るからオレのところに来ないか。人間としての中身をもっと変えないといけない。オレとずっと暮らそう」と言いくるめ、9月、専門学生の寮から衣類等の生活用品を持ってこさせた。逆らうと暴力をふるう。未知が級友に相談すると、「精神的苦痛を受けた。過去を全部捨てろ」「殴られる時は逃げるな。お前が悪いからやっているのに、何で逃げたりするんだ?」などと言って、暴力を繰り返し、「一生、忠誠を誓う」などの誓約書を書かせた。ご主人様と呼ばせ、テレクラでバイトをさせようとしたが、電話がつながらなかったことに腹を立てて、暴行を加えた(この件で、傷害罪で起訴)。10月、未知のクレジットカードでネット使い放題の契約をさせようとしたが、無職のため契約ができなかった。そのため、健康器具で殴打。右手甲部には熱湯をかけ、火傷を負わせた。

©iStock.com

 平成13年(01年)11月頃、Aはチャットを通じて静岡市の里美と知り合った。自分は声優やモデルをやっていると偽り、一緒に暮そうと誘った。「今とは全然違う世界を見せて上げる」。家出してきた里美は翌年2月から一緒に暮らし始めたが、たびたび殴る蹴るの暴行を受けた。その翌月には、静岡市の17歳、大西江理(仮名)もネットで知り合い家出させた。里美を含めた3人で暮らすようになったが、Aは江理と結婚する。親には承諾をとっていなかったが、「私は娘の結婚に同意いたします」等と里美が書き、婚姻届を提出した(この件がのちに起訴される。里美は事情をかんがみ不起訴)。

ネットで出会うリスク

 監禁王子事件は、心理的に淋しい女性たちがネットをきっかけに犯罪者と結びついてしまった。ネットによる出会いの「負」の部分が露呈した場合、過激な犯罪にもなりやすい。このような事件は特殊ではなく、実はたびたび起こっている。

ルポ 平成ネット犯罪』では、そうした事件の遷移について伝えている。

ルポ 平成ネット犯罪 (ちくま新書)

渋井 哲也

筑摩書房

2019年9月6日 発売

この記事の写真(6枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー