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「チームの顔」とは何なのか――嶋基宏“退団濃厚”報道にファイターズファンが思うこと

文春野球コラム クライマックス・シリーズ2019

2019/10/10
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大野奨太FA時に感じたもの

 私のこの勝手な寂しさは、思い起こすと大野奨太FA時に感じたものとよく似ている気がします。正捕手の座を賭けて勝負するためには移籍しなければならないと決心する、それは尤もなことだと頭では判っているのですが、でも寂しくてしょうがない。だってずっといてくれるものだとばかり思い込んでいたんです。FAするかもしれないと最初に取り沙汰された時には覚悟しました。けれどもそこで残留だったので、油断が生じておりました。レギュラーではなくなってもチームを支え続ける存在でいてほしかった……完全にただの身勝手なのですけれども。

 大きな怪我をしたという訳でもない選手にまで稲葉篤紀金子誠パターンを期待するのは、「ベテランになったら自動的に若い選手に道を譲れ」と期待するのと同義でありましょう。そしてまた、「ファンと同じようにこのチームを唯一無二のものとして愛してくれ」とも。でももちろんそれは無茶というものです。

 体の調子さえよければ若い選手とも充分に同じ土俵で勝負できるし、それをさせてもらえないというのであれば、思い切って新天地を求めたい。その気概があるからこそ、プロの世界で生きてくることができたのでしょうから。

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 在籍し続ければ誰もが認める「チームの顔」となるような選手こそ、そういう気概を人一倍持っているものでもあるのでしょう。ファンの身勝手な愛情は、常に片想いとなることに決まっているのかもしれません。

 10月8日、中島卓也がFAについて悩んでいるというスポーツ報知の記事を見ました。

 残ってほしいなあ。どこにも行かないでほしいなあ……わがままだと判ってはいるけれども。

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