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都心部の学校に優秀な生徒が集まり始めている

 たとえば2019年春の、各都立高校の東京大学合格者数をみてみよう。一時は東京大学合格者数が一桁台に落ち込んでいた日比谷高校の47名を筆頭に西高校19名、国立高校16名が続くが、注目すべきは都市部の学校で一時は進学成績が低下していた青山高校が10名、小石川中等教育学校も16名の合格者を出していることだ。いっぽう郊外人口増加の流れに乗って進学成績を伸ばしていった立川高校は2名に落ち込んでいる。

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 この現象から窺えることは、人口の都心回帰の動きが郊外部の高校の進学成績を落とし、都心部の高校に優秀な生徒が集まり始めているということだ。私立高校でもこの動きは顕著だ。開成高校や麻布高校といった東京大学合格上位の常連校を除き、私立高校の間でも今は都心部の学校に良い生徒が集まる傾向にあるからだ。

 渋谷教育学園渋谷高校は、同系列の幕張高校が72名の合格者を出しているものの19名、本郷高校はかつて東京大学合格者リストには縁のなかった学校だが5名。早稲田高校(30名)、海城高校(46名)はいずれも新宿区の学校、豊島岡女子学園(29名)は豊島区の学校、攻玉社高校(15名)は品川区五反田の学校だ。

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街選びは学校選びの時代になっている

 実はこうした「人の流れ」によって学校の進学成績が変わることは、不動産の現場でよく遭遇するできごとだ。たとえば大手デベロッパーなどによって広大な工場跡地に開発された大規模マンションでは、教育熱心な家庭が一時に多数引っ越してくることから、街の小学校や中学校の生徒の姿が激変してしまうことがある。

 ある大手デベロッパーの大規模住宅開発地では、多数のマンション住戸が分譲され、このエリアの小学校に大量の「新参者」の小学生が流入してきたことから、地元の子と争いになってしまったという。この開発地はもともと港町であったことから、漁業関係や港の荷揚げ業者の子息が中心だった。そこの学校につるんとしたお坊ちゃま、お嬢ちゃまが大勢入ってきたことから学校は大混乱となった。

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 初めのころはやんちゃ坊主に泣かされていた新参者だったが、最後は多勢に無勢。次々と入学してくる新勢力によって学校の偏差値はどんどん上昇。やがてはそのエリア一番の成績をあげる学校になってしまった。 

 このように有名進学校の盛衰には、実は街の盛衰の歴史が隠されている。最近ではマンションを選ぶ際、地元の小学校の良し悪しを徹底的に調査する親が多いという。街選びは学校選びの時代になっているのだ。