アンチエイジングの権威として知られる吉川学長
吉川学長は1973年、府立医科大学を卒業後、第一内科(現在の「内分泌・糖尿病・代謝内科」)の助教授を経て2000年に教授に昇任した。その後、同大の免疫内科、消化器内科の教授などを歴任し、2011年に学長に就任。以降、2期6年にわたって学長を務め、改選期となる今年も続投に意欲を示し、三選を目指している。
専門は消化器内科だが、免疫学、アンチエイジングの権威としても知られ「不老革命!」(朝日新聞社)や「アンチエイジング教室」(毎日コミュニケーションズ)など多くの著書を上梓。高視聴率を誇る教育バラエティ番組「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)にも「若さと健康の世界的権威」として出演していた。府立医大関係者が語る。
「吉川学長は若い頃から〝政治〟に長けていて、京都府や病院関係者だけでなく、政財界にも幅広い人脈を持っています。2014年には『日本電産』の永守重信会長から70億円の寄付を受け、『最先端がん治療施設』を建設。昨年には『ローム』から20億円相当の『ホウ素中性子捕捉療法』装置の寄付が決まりました。これら多額の寄付が集まったのも学長の政治力の賜物です」
だが、吉川学長の「幅広い人脈」は政財界だけではなかったようだ。前出の捜査関係者が再び語る。
「府立医大で高山総長の移植手術が行われる約1カ月前の2014年6月、吉川学長と高山受刑者は京都・先斗町のお茶屋の二階で会っている。二人を引き合わせたのは双方と親しい、現職の京都府警の捜査員だった。この捜査員は長らく暴力団捜査に従事していたが、府警内部で淡海一家との癒着が問題視され、組対(組織犯罪対策課)から外され、当時は所轄に飛ばされていた。後に淡海(一家)との関係が表面化し、依願退職するのだが、退職後の今も淡海の息のかかった警備会社の顧問に就いている」
先斗町のお茶屋で、現役の暴力団幹部と大学学長が、現職警官の仲介で密会したのが事実とすれば、古都・京都の闇の深さが垣間見えるエピソードだが、前出の府立医大関係者によると、高山総長への厚遇ぶりは相当なものだったという。
「高山総長の手術は府立医大の中でも、生体腎移植手術で№1の腕を持つ講師が行い、手術には吉村病院長だけでなく、吉川学長自ら立ち会ったそうです」
筆者の質問に対する病院側の回答は?
京都府警の捜査を受けて、府立医大が開いたのが、冒頭の記者会見だ。
会見で、病院側は「回答書は、(患者の)その時々の病状に基づき医師の判断で書いたもので、(強制捜査を受けたことは)疑問だ」(荒田均事務部長)と捜索容疑を否定。講師が「吉村病院長の指示で(回答書に虚偽を)書かされた」と供述していることについても「病院長は『虚偽の事実など書いていない』、『(回答書は)講師と相談して書いた』と話している」などと否定した。
そこで筆者が冒頭の質問をしたところ、荒田事務部長は「(日時などの)詳細は不明だが、学長は『(高山受刑者と)会ったことはある』と話されていた」と回答。ただしそれは「病院の敷地内でのこと」だという。
西日本を代表する公立医科大学の医師たちが、現役の暴力団幹部の収監を遅らせるため、検察に虚偽の回答をしていたという前代未聞の捜査は今後、どこまで伸びるのか。