昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2019/10/17

人口の急膨張でインフラの整備が追い付いていない

 この騒動は一時、多摩川の氾濫によるものとされたが、事実はやや異なるようで、大量の雨水が下水管に流れ込んだために処理しきれなくなり冠水した、というのが原因のようだ。

 武蔵小杉では短期間の間に大量のタワマンが供給されたため、川崎市中原区は20年前には人口が19万5000人だったのに対し、現在は26万1000人に膨張している。そのため、区によれば社会インフラの整備が追い付いていないという。

台風19号の直撃後、10月14日夜の武蔵小杉。右のタワマンではほぼ全て、左のタワマンでも多くの部屋の電気が消えている ©AFLO

 たとえば急増する児童に小学校の整備が追い付かない、JR横須賀線の武蔵小杉駅は毎朝駅に入場する通勤通学客で長蛇の列ができるなどといった事態が、既に何度も報道されてきている。そして今回の水害は下水道整備が追い付いていないという実態も浮かび上がらせた。

 タワマンは広い敷地といえども、容積率いっぱいで地上40階程度に聳え立っているために、1棟当たりに居住する住民の数は半端ない。その下水道には、1棟あたり数百戸の住民が使う上下水が大量に流れ込むため、雨水の処理が間に合っていないのだ。これは個々のマンションの問題というよりも、短期間に急速に発展してしまった武蔵小杉という街の宿命ともいえよう。

デベロッパーの「売り逃げ」を防ぐために

 東京都江東区では総戸数30戸以上のマンション建設にあたっては、開発業者に公共施設整備協力金を依頼している。江東区は東京都心に通うサラリーマンの居住エリアとして大量のマンション建設が行われてきたが、住民の増加に伴って小中学校の整備が追い付かなくなるなどしたために、社会インフラの整備を目的にこの制度を導入している。

 寄付金という建前だが、30戸を超える部分の住戸については1戸当たり125万円の負担を求めており、多くの業者が負担し、学校や公共施設の整備などに充当している。

©iStock.com

 今後は武蔵小杉に限らず、タワマンなどの高層建築物に対しては社会インフラ負担金を求めていくべきなのではないだろうか。デベロッパーはマンションを建設、分譲してしまえばあとは「売り逃げ」するのが基本的な行動パターンだ。武蔵小杉はその典型で、デベロッパーが各社勝手に分譲し、その後の面倒を見ていないことが、殺風景で彩に欠ける街並みを生んでいるばかりか、今回のような水害の一因になっているのではないかと考えられる。

 社会インフラの整備を旧住民だけでなく開発業者や新住民たちにも応分に負担させることで、社会全体での安心、安全な街づくりになる。今回の台風災害で得た教訓を新たな防災の考え方に活かしていきたいものだ。

この記事の写真(7枚)

+全表示

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー
z