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荻原守衛作品の白眉がずらり
同展には荻原守衛の彫刻作品ができるかぎり集めてあって、短くとも濃密だった彫刻家としての足取りと達成を一堂に観ることができる。デッサンや絵画、スケッチ帖に書簡とゆかりのモノも多数並んでいて、彼の人となりを想像できるのもいい。心の師だったロダンの作品もあり、荻原の彫刻との異同を推し量れて興味深い。
荻原の彫刻作品でとりわけ目を奪われるのは、1908年作の《文覚》、09年作の《デスペア》、そして10年《女》だ。
《文覚》は、愛する女性を誤って殺めてしまった僧侶の姿をかたどったもの。《デスペア》は絶望に打ちひしがれる女性の様子を表している。《女》は、不自然で苦しげなポーズをとる女性の像だが、それでも顔面は上方を向いて光を見出しているかのよう。静と動、抑圧と解放など両極端なものをひとつの像に同居してあるのが、観る側をなんとも不思議な気分にさせる。
「恋の三部作」と呼ばれることもあるこれらの彫像をはじめとして、荻原作品はいずれも単にもののかたちをかたどったに留まらず、その内に蠢く何かがあると感じさせる。彫刻という像の中に荻原が埋め込んだ強烈な感情を、会場でじっくり読み取ってみたい。