「文藝春秋」10月号の特選記事を公開します。(初公開 2019年9月24日)

 8%から10%への消費増税がいよいよ迫ってきたが、JR東日本が新たなポイントサービスを10月1日から開始すると発表した。Suicaを使ってJR東日本の電車に乗ると「JRE POINT」にポイントが還元されるのだ。スマートフォンのアプリ「アップルペイ」に登録する「モバイルSuica」であれば、還元率は最大で2%。つまり消費増税分がこれで賄えることになる。

 消費増税を機にポイントサービスに力を入れているのはSuicaだけではない。主にQRコード決済のPayPay、LINEペイ、楽天ペイ、オリガミペイなど“なんちゃらペイ”は次々と「○%ポイント還元」や「○円引きクーポン」など大型キャンペーンを発表し、大きな注目を集めている。

乱立するキャッシュレス決済

 10月からキャッシュレス決済をすればポイント還元が受けられることもあって、“なんちゃらペイ”以外にも、キャッシュカードやデビットカード、Suicaに代表されるプリペイド型の交通系電子マネーや、クレジットカードと紐づいた「iD」やクイックペイなどの後払い型の電子マネーなどが乱立状態にある。キャッシュレス決済はさながら「戦国時代」の様相を呈しているのだ。

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 だが、それぞれ何が違うのか、どんなメリットがあるのか、結局どれを使えばいいのかよくわからない人も多いのではないだろうか。

「なんちゃらペイ」は現金払いよりも退化している

「これだけはハッキリと言えます。『なんちゃらペイ』を使う必要はない」

 こう断言するのは日本マイクロソフト元社長で、書評サイト「HONZ」代表を務める成毛眞氏だ。

成毛眞氏 ©文藝春秋

 その一番の理由は決済速度だという。「なんちゃらペイ」はスマートフォンのアプリを立ち上げてパスコートの入力や指紋認証を行いQRコードを表示。そのコードを店員に読み取ってもらう必要がある。

 場合によっては、自分のスマホのカメラを使ってレジの横などに設置されたQRコードを読み取り、自分のスマホに商品の金額を入力して店員に確認してもらうという、さらに手間がかかることもあるのだ。

「支払いが完了するまでに手間と時間がかかりすぎる。財布から現金を出した方がよっぽど速い。決済速度でいえば、QRコード決済は現金払いよりも退化しているのです」