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2019/11/05

大手デベロッパーにとっては“飴玉”となった

 新築ばかりに目が行きがちだが、この改正は既存のビル、つまり既得権益者の懐をも実は潤すことになる。そもそもこの法律改正が行われた背景には、エレベーターがない老朽化した団地やマンションに対し、その設置を促そうとする目論見があった。容積率が制限いっぱいだったり、既存不適格ですでに現行容積率をオーバーしていても、「エレベーターは床面積とみなさない」とすることで、新たに設置できるようになると考えたのだ。

 だが実際には、老朽化した団地やマンションの管理組合にはエレベーターを設置する財政的な余裕はなく、この恩恵は既存のビル業者、とりわけ超高層ビルなどを所有する大手デベロッパーにとってとても「おいしいボーナス」となったのだ。

©iStock.com

 たとえば西新宿の超高層ビル群は床面積がおおむね5万坪程度。これまでは容積率いっぱいに設計されていたためにこれ以上の床の増築は望めなかったのが、3%程度とはいえ「余剰容積」というボーナスが転がり込んだのだ。5万坪の3~4%といえば1500坪から2000坪に相当する。

 現実的には既存建物に「積み増し」することは不可能だが、超高層ビルは敷地に余裕のあるところが多いので、敷地内に物販所やレストラン棟を建てて賃貸すれば、新たな収益源となるのだ。実際、このエリアのいくつかのビルで今、増築工事が行われている。それはこの法律改正という“飴玉”がなせる業なのだ。

「富める者」にさらに利益が与えられる構図

 オフィスビルだけではない。この改正はタワマンにも大きな恩恵をもたらす。40階建、50階建のタワマンで14年夏以前に建設されたものであれば、やはり1000坪以上のボーナスをもらっているところも多いはずだ。

 分譲後のマンションは、管理組合が運営する。ちょっと賢い理事長であれば、管理組合で借金して敷地内に店舗を建設して賃貸するだろう。また、新たに別棟のマンションを建設して分譲売却するなど、管理組合財政を思い切り改善できる可能性があることに気が付くことだろう。もちろん土地には建蔽率があるので、建蔽率以内に建物部分の面積が収まっていることが条件とはなるが。

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 立法府と大手企業はこうしていろいろな手段を弄して利益を享受する。目の前の事象だけで「いいね」と思うだけでなく、「なぜ」「どうして」とその背景を探っていくと、世の中は必然として「富める者」にさらに利益が与えられる構図になっていることがわかるのだ。知らないものは損をする。世の中の理だ。

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