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2019/11/05

「エレベーターのスペース」が床面積の対象外に

 これまで容積率の対象となる建物の床面積には、エレベーターのシャフトの空間部分、つまりエレベーターのカゴおよびカゴを囲むシャフト部分の面積もカウントされてきた。

 たとえば、1台のエレベーターが1階から50階まで行きかうビルでの計算はこうなる。エレベーターにはいろいろな大きさがあるが、「東芝製乗用エレベーター15名定員」の昇降路は縦2.15m、横2.15m。面積にして4.62平方メートル(約1.4坪)ある。これまでの建築基準法では、50階建であれば50層分の床があると考え、4.62平方メートル×50層=231平方メートル(約70坪)を、容積率の対象となる「床」としてカウントしてきた。

©iStock.com

 一見すると大した面積には見えないかもしれないが、通常の超高層オフィスになるとエレベーターは30台以上設置されている。もちろんすべてが最上層階までつながっているわけではないが、その面積は建物延床面積のおおむね3%から4%に相当する。

 つまり、たとえば床面積15万平方メートル(約4万5000坪)のオフィスであれば、4500平方メートルから6000平方メートルが、本来はエレベーターのスペースなのに「床」とみなされてきたということである。

 それが、建築基準法の改正により、容積としてカウントしなくてよいということになった。これは超高層オフィスの優に1フロアから2フロア程度の面積に匹敵するのである。

法律改正による“ボーナス”で生まれた展望施設

 この改正は14年7月からであったために、当時建設計画をすすめていた多くの超高層オフィスビルで建築申請のやり直しが頻発した。赤坂インターシティAIRは14年9月に着工したが、途中で計画を変更して37階建を38階建に変更、床面積も17万5000平方メートルから17万8000平方メートルに約1.7%「嵩上げ」している。

 また、太陽生命日本橋ビルは14年11月に着工したが、これも途中で計画変更。26階建から27階建と、やはり1フロア積み増し、面積にして約3.5%膨らませた。

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 渋谷スクランブルスクエアも同様だ。当初は床面積を17万4000平方メートルにしていたものを、建築基準法の改正後、18万1000平方メートルに約3.5%「積み増し」しているのだ。つまり、法律改正によるいわば“ボーナス”を展望施設などに充当したというのが、今回の「渋谷スカイ」のカラクリだとも想像される。

 現在計画中のビルは、すべてこの法律改正によるボーナスを前提に設計している。容積率の変更は都市計画に関わる問題なので地域内でのコンセンサスを取るのに自治体は苦労するが、建築基準法改正は毎年のように行われているので、こちらはあまり調整する必要がないという側面がある。さらに与党多数の国会であれば、大手企業の望むような改正案が通る可能性は高いというわけだ。

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