11月1日、渋谷に新しい再開発ビルがオープンした。渋谷スクランブルスクエアだ。これは「渋谷駅街区開発計画」の一環で、JR東日本、東急電鉄、東京メトロが推進している計画の第1期工事にあたる部分だ。この建物は開発地の東側にあり、2012年4月に開業した「渋谷ヒカリエ」と明治通りを挟んで向かい合う。
東京の街並みを一望できる「渋谷スカイ」
渋谷駅のほぼ真上となる中央棟と、東急東横店があった場所の上にあたる西棟は2028年の完成を予定している。今回オープンしたのは東棟で、工事ばかりが続く渋谷駅周辺でようやくお目見えした駅再開発事業の顔となる建物である。
東棟は地上47階・地下7階建。延床面積18万1000平方メートルの巨大ビルだ。3階部分でJRや東京メトロの駅と接続。地下2階から3階のアーバンコアを通って東急東横線、田園都市線、東京メトロ副都心線、半蔵門線に接続される。
また、地下2階から地上14階部分には2万5000平方メートルの商業施設(212店舗)、17階から45階はオフィスとしてミクシィやサイバーエージェント、ZINEなどのIT系テナントの入居が決まっている。45階から上は展望施設となっており、屋上部分の「渋谷スカイ」からは東京の街並みを一望できるとの触れ込みだ。
ちなみに展望料金は大人1名で2000円(当日窓口チケット)。東京スカイツリーの3000円は日本一高い眺め(地上450m)だからまだしも、せいぜい地上230mで2000円とは驚きの価格だが、11月中は既に予約でいっぱいだという。
カスタマーファーストの大盤振る舞いなのか?
たしかにビルの屋上を開放して展望施設にする事例はあまりない。ビルの屋上部は多くの場合、空調機械などのビル設備で埋め尽くされ、また防犯上の問題もあって一般には開放されていない。せいぜい屋上緑化で、あまり値の張らない樹木や植物を植える程度が活用方法だった。そこに不特定多数の顧客を招き、屋上からの眺望を楽しんでいただこうというのは斬新な発想だといえる。
タイのバンコクにあるウェスティンホテルの屋上には屋根のないトップバーとレストランがあるが、日本では百貨店の屋上に夏季期間中にビアガーデンなどを設置する程度がこれまでの利用法だった。
もちろん屋上部分は天候の影響を受けるので、渋谷スクランブルスクエアでは屋内からの展望施設も用意し、景観を楽しんでもらうために贅の限りを尽くしている。
展望施設は今回、1名2000円の料金をとるというが、収益性という観点から考えるならば、オープン当初は大勢の顧客が来場するかもしれないが、中長期的に高収益を期待できるような施設とは言えない。
そうした施設をわざわざ設けてくれるのだからずいぶんと太っ腹、大盤振る舞いのように見えるが、ここには大きな理由がある。それは、2014年の7月に実施された建築基準法の改正である。
実はこのときの改正で、建物を建設する際の規制となる容積率(敷地面積に対して建設することができる建物の面積の割合)に手心が加えられたのだ。