中国政府について言及しない両者
このまま中国という巨大市場の発展を指をくわえたまま眺められるほどの企業であれば、世界最大級の企業には成長していないだろう。
ただ、その再進出実現の暁には、「毒まんじゅうを食べさせられることになる」というのがセキュリティ業界界隈の見方だ。現にグーグルのCEOは昨年10月、中国側の検閲に対応した検索エンジンの開発を進めていることを公の場で明らかにしている。
傍証もある。香港デモで中国政府寄りのフェイク情報が拡散した際、グーグルはツイッターやフェイスブックなどと同様、削除したが、中国側を非難する声明を発表したツイッターに対し、ここでもグーグルは中国政府について全く触れていない。ここまで来れば、グーグルが中国政府にあえて言及しなかった理由も明らかだろう。忖度だ。
実は、それはアップルにしても同じこと。被害者としてのウイグル族への関連を指摘する報告書でも、アップルはついに加害者としての中国政府の関与については触れず仕舞いだった。アップルはiPhone関連部品の供給の相当部分を中国に頼っているだけでなく、さまざまなサービスも展開している。
グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字をあわせて「GAFA」ともよばれる4巨頭。株価の時価総額の合計は3兆ドルを超え、世界にまたがる節税対策はG7での議題に上るほど。また、トランプ政権への懐疑を表明する従業員や幹部も多く、リベラル勢力として見られてきた。だが、中国という巨大な市場を抱える相手に対しては、人権問題に目をつぶっているといわれてもしようがないだろう。
自由の旗手ともされたインターネット界の雄すら、互いの中傷はしても、中国版ビッグブラザーの黒幕には表だって文句も言えない。薄ら寒い時代の北面だ。
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