ある調査報告書が思いもかけず、IT界の巨人同士の大げんかに発展している。世界最大の検索サイトを運営するグーグル側がアップルの看板スマートフォン「iPhone」の欠陥が犯罪集団に悪用されていた調査を公表すると、今度はアップルが調査内容を大批判する始末。
グーグルが発表した欠陥は、利用すればiPhoneのメールの内容や連絡先が見放題になってしまうというものだった。
「iPhone全体を標的にした攻撃の実情に関する洞察を明らかにする準備ができた」
8月にグーグルでセキュリティー分析を担当するスペシャリスト集団「TAG(脅威分析集団)」が結果をこう公表すると、iPhoneのユーザーを不安に陥れた。欠陥はすでに修正されていたものの、TAGは「全人類の個人的な行動をリアルタイムで監視」していた、などと刺激的な言い回しを多用。“プライバシーの塊”であるスマートフォンが盗み見の脅威にさらされていたとあってはその不安も無理もない。
こうした欠陥は日々、スマートフォンやパソコンには発見されるもので、このスペシャリストたちも何百という欠陥を公表してきた。が、今回は猛烈な反響を生んだ。スマートフォン用のOS「Android」を展開するグーグルにとって、アップルのiPhoneはスマートフォン界を二分する最大のライバルだ。調査報告はAndroidの欠陥には何ら言及がなく、アップルへの攻撃とも取られかねない「危険球」だったのだ。
当然ながらアップルは謝罪に追い込まれると思いきや、あえて反撃に出た。
「私たちは懸念を持ったお客様からお声を頂戴しました。お客様にはきちんと事実を知ってほしいと思います」
商品の欠陥の指摘を受けた後の声明にしては随分、攻撃的なトーンだ。そのわけは読み進むうちに分かる。アップルはいう。
「今回の攻撃は対象が絞り込まれており、(グーグルが)説明するような『全体』ではありませんでした。攻撃は10個程度のサイトのみにかけられ、そのいずれもがウイグル人コミュニティーに関係するものでした」
そう、グーグルの発表では核心部分がぼやかされていた。今回の欠陥は単なる欠陥ではなく、中国政府の弾圧が国際問題となっているウイグル族をターゲットにしたものだったのだ。