それにしても『安倍晋三記念小学校』という字面は何度読んでも強烈だ。
『三波伸介の凸凹大学校』以来のインパクトである。
懐かしのバラエティー番組は置いといて、「森友学園」ネタが盛り上がっている。2週間前にはこんな書かれ方だった。
《少し前まで政治家や中央官庁が名前を連ねるニュースならば「こんなおいしいものはない」とばかり各紙社会部が飛びついてスクープ合戦を繰り広げたものだ。大阪ではニュースになっているようだが、東京では伸び悩みだ。》(「日刊スポーツ」「政界地獄耳」2月18日)
この社会面コラムタイトルは「首相の疑惑追及なぜ伸び悩む」。
野次馬的な新聞の読み方を推奨したい私としては「なぜ報じないのか!」と怒るのもいいけど、「どこが報じないのか?」とニヤニヤして読み比べることもオススメしたい。
「とりあえず取り上げました」感がすごい読売新聞
例をあげよう。安倍政権を支持している(と思える)「産経新聞」「読売新聞」の報じ方がとにかく面白いのだ。
森友学園ネタの初出は2月9日の「朝日新聞」。「学校法人に大阪の国有地売却 価格非公表、近隣の1割か」。
「読売新聞」が報じたのはその9日後。
2月18日に「国有地売却で首相『関係していたら辞める』」と初めて報じ(東京版)、その次は6日後。「国有地 8億円安く売却 評価額より 大阪の学校法人に」(2月24日)。
国会で議論になったので「とりあえず取り上げました」感がすごい。
産経新聞は2月18日に「国有地売却 差額に波紋」と社会面(東京版)で初出し。そのあと森友学園絡みで目立って面白かった記事が、
「民進、公聴会サボる」(2月23日)。
《民進党の辻元清美、玉木雄一郎両衆院議員が21日に開かれた衆院予算委員会の中央公聴会を“無断欠席”していたことが22日、分かった。(略)大阪府豊中市の国有地が学校法人「森友学園」に売却された問題の「追及チーム」メンバーとして現地を視察していた。》
そ、そこ!?
こういう切り口での「森友学園」の登場の仕方だった。読み比べの醍醐味である。
首相の「意向」と「威光」、そして「忖度」
私は前々回のこのコラムで「安倍首相の"朝日に勝った"発言」を取りあげた。最近の朝日は元気がないのでは? とも書いた。今回の森友学園ネタは"朝日の逆襲"にも思える。新聞好きとしてはウオッチしたい展開だ。
安倍政権を支持する新聞と批判的な新聞。私はどちらがあってもいいと思う。どちらも読むと違いが浮き彫りになって便利だからだ。たとえば「今、政権側にとって何が厄介なのか」は、むしろ親政権側の新聞を読んだ方がわかる。他と比較してあまり報じられていないものに注目すればよいのである。それが現在は森友学園ネタなのだ。
さて、この森友学園問題。最大の興味は「首相の関与があったのか、なかったのか」。
首相は先月17日の衆院予算委員会で「妻が名誉校長になっているのは承知している。私や妻が(売却に)関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める」と述べた。
ここで、読み方が同じ2つの漢字をあげたい。「意向」と「威光」。
首相が関与していればもちろん「意向」。これは無いと首相は否定している。
では、誰かが首相の「威光」を利用したことは無かったのか?これが私にとっての興味である。
さらに言えば、ここ数年「忖度(そんたく)」というキーワードがよく出てくる。
2014年11月、安倍首相がTBSの『NEWS23』に出て「街の声」が偏っているとイラッとするや、数日後に自民党から在京のテレビ局に(この後おこなわれる)衆議院選挙は「中立公平に報道すべき」という要望書がおくられた。
これは首相の「意向」かもしれないし、周囲の「忖度」かもしれない。そのあとテレビ局がビビったことを考えると「威光」はあったと思える。
(※現在のテレビの選挙報道姿勢については「真の争点に焦点を合わせ、主張の違いを浮き彫りにする挑戦的な番組が目立たず、残念」という見解が出た。「選挙報道の公平性、量で判断せず BPOが初見解」「日本経済新聞」2月7日)
果たして今回、同じ構図(意向、威光、忖度)が森友学園に対してあったのか、なかったのか。冒頭で紹介した記事のように「こんなおいしいものはない」と新聞が活気づかなければウソだ。
最後に言うと、「安倍晋三記念小学校」で気になるのは教育勅語でも国粋主義でもなく、国語の授業で「云々」を「でんでん」と読ませるのか? という点です。
とても気になります。